Roots --あたしが私に還るとき
Roots --あたしが私に還るとき
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「良いけど。なんでわざわざその“ツレ”とやらに会わなきゃならないの?こんな怪しいアルバイトに面接なんか要らないでしょ、フツー」
ぼんやりと壁のカレンダーを見遣り明日の日付を確認しながら、言外に面倒臭さを表明する。
明日は土曜日。
父が家に居る日に出掛けるのは少し気が咎めた。
「あー。俺、ツレって言ったっけ?」
「えっ」
「ツレっていうか、先輩なんだよ。俺のバイト先の」
「何よそれ…」
話がチガウ、と云いたかった。
そんなコトなら安請け合いしはしなかったのに、と。
嫌な汗が腋下に滲む。
Dは付属高校から進学した有名私大に在籍しながら、パチンコ店でアルバイトをしていた。
あたしの1コ上だからあと一年間は大学生であるはずだけれど、就職活動などしている様子はない。
「就活はしないの?」
あたしが訊くと決まって、
「バイトで貯めた金で、将来は税理士か会計士の事務所でも開くわ」
などと、まだ資格も取らないうちから途方もない事を云うD。
本気で就職活動をすれば就職先には困らないような良い大学に通ってるくせに、万事そんな調子。
--勿体ないの。
あたしはそんな彼のお気楽さをどこか羨みつつも、内心では嘲笑っていた。
「とにかく、明日な。もう断れないから。俺のバイトが終わってからだから、夕方になるけど」
「夕方って。明日じゃなくても、他の日にできなかったの?」
“断れない”との言い方に不穏な響きを感じてあたしは一寸抗議した。
「知らねぇけど、向こうがすぐに会わせろってさ。まぁどうせなら早い方がイイってコトじゃね?」
「なんか、気持ち悪い」
「そう言うと思った」
クク、と電話越しにDが低く嗤うのに、あたしは溜息を返すしかなかった。
そう。
“断れない”。
いつも、同じだった。
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