Roots --あたしが私に還るとき
Roots --あたしが私に還るとき
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澤村から自宅に毎日電話が来るようになったことを、母は訝しがりつつもその理由を無理に探ろうとはしなかった。
喧嘩でもしたの、と一度訊かれただけだ。
その頃、3つ下の妹はいわゆる引き篭り状態、6つ下の弟も中学生ながら煙草に手を出していることが発覚するなどし、母は日々疲弊しきっていた。
コワレ始めていたあたしに気付かずにいた母を責める気持ちになどなったことはないが、しかし。
歯止めをするならこの時しかなかったように思う。
--“修理”しなくちゃ。
はっきりと、澤村との別れを想っていた。
◆
今思えば、いつだって断れた。
Dからの呼び出しも。
その“面接”そのものも。
二人の男に促されながらその部屋に入る時にだって。
あたしは、Dに気に入られたかったのだろうか?
Dの要求はいつも突拍子もなく、その度あたしの常識的な感覚を麻痺させ、理性を逸走させた。
それらにあたしは逆らえないでいた。
毎回、それなりに異議を唱えたり不快感を露にすることはしても、結局は彼の言いなりになってしまう。
いつも、同じ。
Dはそういうあたしを、生意気で馬鹿な女だと決めてかかっていただろう。
あたしはそれをも感じ取っていた。
そしてそのコトが尚更にあたしをけしかける。
逃げたくはなかった。
毒を喰らわば皿までと。
懐に潜り込み反逆の機会を待ってみよう。
そんな心境だったかもしれない。
◆
その前日。
「昼間話してた仕事の店長に会わせるからな。明日の晩、空けとけよ」
受話口から耳へ這いずり寄る、低い低い、のったりした声。
昼間渡されたポケットティッシュの件で夜遅くにDからの電話連絡を受けた時には、あたしはもう半分以上“例の仕事”への興味を失っていた。
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