Roots --あたしが私に還るとき
Roots --あたしが私に還るとき
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湿っぽい布団を払いのけて裸の半身を翻し、鞄を手繰り寄せ探った。
薄く白い小箱。
取り出した覚えたての煙草をくわえて火を点けるあたしに、
「そんな変な煙草、やめとけよ。マルメンとかKOOLとかそうゆーカッコイイの吸えば?」
Dはまたいつものふざけた調子で小馬鹿にしながら火の点いた煙草を取り上げた。
その細い煙草は、彼の細長い指にあたしより似合ってるみたいに見える。
あたしは悔しくなり、顔をしかめて彼を見遣る。
「なにそれ。煙草なんて何吸おうと放っといてくれる?自分の女と間違えてんじゃないの」
Dは可笑しくて堪らないという顔をして、あたしの煙草をひと吹かしする。
「あーでもコレ、意外とキツいんだな。何ミリ?」
「タール7mg」
「ふぅん…」
しばし、黙って喫煙するD。
その様子に、あたしは少し得心した。
エピック・メンソール。
箱のデザインも味も気に入り、わざわざそれが置いてある煙草店まで足を運んでまで購入していた大好きな煙草だ。
今はもう何処にも売っていないその煙草。
喫煙を始めたことは澤村にも家族にもまだ内緒だった。
「はぁーあ」
Dはわざとらしく大きな生欠伸をし、枕もとに幾つも転がったビールの空き缶の一つに吸い終わった煙草をほうり込むとあたしの肩に冷たい指を引っ掛けて無造作に押し倒した。
「何、もう」
抗うフリで媚態を演じるあたしを、
「しょうがないよな、お前も」
いつもの薄ら笑いで組み伏せる。
何がショウガナイの、と云いたかったがあたしは諦めた。
その一服を終えるまで、じっと見詰めていたのがいけなかったのだろう。
「お前、ホントあれだな」
「なによ…、ッあ」
分け入ってくる、指。
瞬時に沸点まで押し上げられる肉の悦び。
「水びたし。まだ足りなかったんじゃねーの」
「だっ…やだ、あぁん」
鼻をつく、饐えた匂い。
煙草がビール缶の中で燻る匂い。
「淫乱」
遠くで犬が吠える声が聞こえた。
その時のDの顔つきとその言葉。
共に今も消え去ることなく残る記憶だ。
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