Roots --あたしが私に還るとき
Roots --あたしが私に還るとき
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「お前さ。男ナシではいられないカラダなんじゃねぇ?」
Dは云った。
あたしはいつものようにDに呼び出され、薄寒いワンルームの狭い玄関廊下に両膝をついている。
口を開いて答えようにも、喉の奥まで捩込まれたソレが言葉を塞いでいるのだからどうしようもない。
ただウンウン頷くだけだ。
Dの部屋。
ついこの間越してきたばかりのはずなのに、何故こうも散らかるのか。
目に見えない埃のような何かがもう十年分くらいは積もっているような、空気。
いつもそう。
彼は堅気でない父親を嫌い、湯水の如く父親の金を使い遊び歩いていた。
それがまるで趣味であるかのように独りで住み処を転々と変えては様々な女を連れ込み、時には同棲めいたヒモ暮らしをしているようだった。
雑然とした部屋の有様はそのまま、Dの内面の澱みを表す坪庭みたいだ。
その坪庭に、Dはいつもあたしをうやうやしく招待した。
自分を養ってくれている女が居ない隙に。
おそろしく遅漏であるDはいつも、あたしの顔を見るなり先ずは前ファスナーを下ろしてそれを行うよう命じる。
別にどうってことはない。
それはDがあたしを弄ぶための決まりごと。
半ば形式化していたし、性処理の道具に使われることも少しも辛くはなかった。
Dがあたしに愛情のカケラも抱いていないコトは、もちろん承知していた。
それはあたしも同じで、投げやりな烈しさを享有するあたしとDはいつも偽善を振り払う挨拶のようにセックスをするのだった。
痛くなんかない。
--逃げ回っていても仕方ない。判っているのに。
判ってはいても、あの日以来あたしは澤村との連絡を絶ちひたすらこのように怠惰な生活を続けていた。
嘘を吐くのはもう嫌だ。
だけど、澤村に逢えば、その声を聴けばきっとあたしはまた嘘を繰り返してしまう。
澤村があたしを求む以上、あたしはこの関係を嘘や胡麻化しで継続させることはもうしたくなかった。
自らに愛のないセックスをするなら、相手にもそれは同じであってもらいたい。
始めからカラダだけを目的とする相手なら、嘘が嘘でなく、カラダだけがその場限りの真実を模写してくれる。
そっちの方を、あたしは選ぶようになっていた。
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