Roots --あたしが私に還るとき
Roots --あたしが私に還るとき
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「同じようなもんだろ。何にしたっていないんだよ、もう。アイツはいない。もとから妹はいない。妹だなんて思ってたら」
腕に込める力のせいだろうか、その声は低く掠れていた。
「出来るワケないだろ、あんな…」
「やめて」
あたしは聞きたくなかった。
--もう、ユルシテ。
「みぅちゃんと同じ。俺は今日みぅちゃんを、利用したんだ。アイツに重ねて抱いた」
「そんな」
「わかっただろ。そういう男だよ、俺は」
突き放すような口ぶりに、あたしはそれでも納得がいかなかった。
あたしを強く抱く腕は、『救い』を求めている。
そのことだけを、不思議に冷静な直感が伝えてきていたのだから。
「それでもあたしは、邑瀬さんをアイシテイマス」
--それ以外、なんと云えただろう。
報われない愛と知っても。
奇妙に生活感が欠落したその部屋をひとりで出て来た時、表札がわりのテプラが室番の横に貼られているのを見た。
埃に汚れ、薄く残る文字は辛うじて『MURASE』と読めた。
代行バスを待たず、幹線道路を数キロも歩いた。
泣きながら歩いた。
歩いても歩いても、それが帰り道だとは思えなくて、ぐるぐる同じところを逡巡しているような心細さに更に泣いた。
途中、やっと通り掛かったタクシーに乗り込んだ時にはもう辺りは冬の夕闇に堕ちていた。
N駅へオネガイシマス、と告げながらもあたしはまだ涙ぐんでいただろう。
今は非常事態なのだ。
涙を目に浮かべて乗り込んでくる客など見慣れている、といった風にタクシーの運転手は無言で車を走らせた。
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