Roots --あたしが私に還るとき
Roots --あたしが私に還るとき
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鼻腔に纏い付く匂い。
この匂いはなんなのか。
預かりものの胸像みたいにあたしの身体を毛布でくるみ、抱きかかえる格好で横たわったまま無言になった邑瀬。
彼から放たれる匂いとこの部屋の空気が何かしらの反応を起こしている。
その匂いのせいで、すべてを済ませた後でもあたしのカラダの熱っぽさは離れなかった。
その熱さにまかせて、ついに。
ついに尋ねてしまった。
背中からあたしを包む存在に向かって。
「ねぇ。この部屋、本当は邑瀬さんの何なんですか」
暗転。
『このベッド…』
と苦しげに吐いた彼のあの熱い吐息の感触。
その記憶は、今も私を時折たきつける。
そこからの会話は、今なお私の中で暗闇の中だ。
人工的な暗闇ではなく、もっと根源的な。
これが忘却と呼ばれるものなら、私はこう問いたい。
--ならば何故全てを忘れることができないのですか。
闇の声は滔々と答える。
--オマエはイタミを欲しているのだろう?
そしてオマエもイタミを他者に与えただろう。
記憶はその報い。
そうではないか?
ずるりと引き抜かれた肉欲の塊を自らの腰が追い縋る記憶。
貪欲というイタミ。
記憶の中、おそろしい沈黙ののち彼の声は諦めたようにその言葉を暗闇に放つ。
「…彼女、実の兄と寝てたんだ。此処はその為だけの部屋だった」
何を云おうとしても声にならずあたしは沈黙した。
「俺は、彼女を愛してたんだよ。理由なんてない。何故かって…」
あたしを自分の身体に取り込もうとするかの強さで背中から抱く堅い腕。
さらに強く。
「何故って。それが兄妹ってもんだろ?」
暗闇は、弾けた。
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