Roots --あたしが私に還るとき
Roots --あたしが私に還るとき
61ページ目
「…ッ、ちょっと待って」
動きが止まる。
恥骨が密着し、彼がみっちりあたしに埋没したのがわかった。
完全なる結合。
「…っく、はぁ」
邑瀬の唇が嘆息しつつあたしの唇に降りてくる。
「っん…うん…」
子宮が泣いてる、とあたしは思った。
誰のものとも知らぬへたりきった寝具はその涙でびしょびしょだった。
いたみは消えない。
あたしたちだけの弔いの儀式。
密着した唇。
自身のカラダを落ち着かせようと動かないままの彼。
その顔を盗み見する。
押し隠された哀しみの気配が、こんなにもあたしの情欲を沸き立たせる。
あたしのカラダはどうなっているんだろう。
どんなに悼んでもあたしの罪は赦されない。
どこまでかは分からないけれど、このままこのカラダは昇りつめてゆくに違いないのだから。
死んでしまえ、と心で自分の中の悪魔に囁いた。
「ゴメン。もうマジで動くよ、我慢できない…」
どうなっても構わない。
あたしは自分の膝裏から手を離して、罪に溺れてしまわないようにしっかり彼の背に十本の爪を食い込ませた。
◆
今でも、私はそれが現実だったのだろうかと訝しく思うことがある。
その、たった一度の情交で邑瀬が残したもの。
冷たい痛み。
心に熱い傷。
そして--
途切れず続く津波のような罪深い悦楽の記憶。
ドロドロの汚泥にまみれ、暗い谷底でカラダの悦びだけを貧って生きてきたあたしは、その日一度--いや何度も何度も--死んだ。
◆
「怖い、たすけて」
邑瀬という男の、膨れ上がった欲望に刺し貫かれながらあたしは何度も悶え叫んだ。
そのひと挿しごとに、生きながらに逝かされて。
--コロシテ。
もう死んでしまいたい。
手足を愛しい身体に巻き付け、絡みついたまま枯れ蔦みたいに死んでしまいたかった。
彼を残して、あたしは何度も逝った。
いくらでも尽きずに沸き起こる痛みに似た感情を知ってしまったその日、あたしは淫らな快楽だけでは生きていけないカラダに造りかえられてしまった。
愛のない精を放たれて。
これが今日まであたしのしてきたことへの罰なら、これほど相応しい傷みはないだろう。
採点