Roots --あたしが私に還るとき
Roots --あたしが私に還るとき
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「…寒い」
あたしは訴える。
すでにブラとショーツとソックスだけの姿に剥かれ。
大地震でひび割れたままの硝子窓から忍び込む厳寒の冷気が、罪深いあたしの肌を罰するように責め立てていた。
「うん」
邑瀬は生返事しただけで、冷えきった掌をあたしの身体に押し当てる。
その日、あたしは月の無い夜のつるりとした空みたいな紺色の下着を身につけていた。
彼の掌はその下に隠された身体の丘陵を探し当て、氷の指先がそれを登頂する。
真っ直ぐ心臓まで届く、冷ややかな愛撫。
これ以上もこれ以下もないただの唇が、あたしの唇を塞ぐ。
厚めの唇。
柔らかい、とあたしは思った。
ぬくもりだけに、触れていたかった。
あたしは両手の全ての指を彼の髪にくぐらせ、言葉と声を閉じ込めようと足掻く。
『寒い、寒い。助けて』
そう云いたかった。なのに。
「テキトーに、してくれていいですから」
あたしの口からは下らない言葉しか出なかった。
「そんなこと言うな…」
邑瀬は、しかしテキトーにはしてくれなかった。
片手をあたしの背中とベッドの隙間に差し込み、紺色のブラジャーのホックを上手に外す。
もう片方は、脇腹をなぞりながらあたしのカラダの中で一番罪深い場所を目指して彷徨い始めた。
「はや、くぅっ」
その手の、痛いほどの冷たさに焦れる。
邑瀬はあたしの肌の温度を調べるように、内腿に指を滑り込ませて上下に撫でた。
そこだけ生き物らしく湿りとヌメりを帯びた舌は、固く屹立した二つの突起物を弄びながら温かい吐息を吐く。
冷え切った心臓に生命が吹き込まれたような気がした。
彼の舌はなんだかあたしの悦びを引き出そうと躍起になっているみたいだ。
「やぁっ…はやく」
あたしの靡肉は自ら熱く痺れているのに、その上別な熱を帯びた熱いものを希求していた。
もう待てない。
冷たいままの指がそこにやっと辿り着いた時、あたしは自分の眼を溺れさせてしまった。
「はっ…あ。ふ」
「ココ?」
邑瀬は、指を薄い布地ごとあたしの罪悪の傷にめり込ませて訊いてきた。
けれど、その指先は亀裂の底にまでは届いていない。
底にある筈の、あの、罪の釦(ボタン)。
「泣くなって」
あたしの眼、見られてしまった。
邑瀬が布越しにえぐるその裂け目と同じくらいに濡れてしまった、あたしの眼。
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