Roots --あたしが私に還るとき
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--仕方ナイ。
あたしは内心うそぶいた。
こんな懺悔をしたって。
邑瀬は一人の人間であって、神様でも仏様でもない。
嫌われよう。
こうなったら徹底的に嫌いになってもらおう、と。
しかしあたしは、未だ浅薄だった。
我を忘れ、相手を思いやるコトも忘れ、自らのエゴの為だけに“傷つけてもらおう”だなんて。
知らなかったのだ。
“人を傷つけるコトで、自らも深く傷つく”、そんなコトすらも。
そして、邑瀬の言葉に隠された真実を見抜くこともできなかった。
仮に見抜くことができたとしたら。
あたしはやはり同じように行動しただろうか?
しかしそれは、意味のない想像でしかない。
沈黙。
長い長い沈黙。
「あたし…邑瀬さんに抱かれに来たんです」
そんなわかりやすい言葉など、あたしは用意していなかったはずだった。
--チガウ。コンナコト、言イニ来タンジャナイ。
携帯を握りしめる手のひらにじわりと汗が滲む。
それを云ってしまったのは、何か悪魔的な力に衝き動かされたからだ。
この感じ。
覚えがある。
あの時は床にエンジ色の絨毯があったのに。
今は無い。
ねぇ、先生。
あまりに此処は、寒すぎます。
けしかける、なんて甘いものではない。
それは邑瀬にとってみれば謀略でしかなかったろう。
その言葉の魔力は激しい渦になって邑瀬の身体をも侵食した。
そう。
あの渦だ。
携帯が、汗ばむ手の中から冷たい木の床へゴト、と音を立てて滑り落ちる。
痛い、と思った。
その時強い力で掴み取られたあたしの右腕は、その痛みから逃れるために反射的な動きで空を切った。
バランスを失い、左手を床についてやっと邑瀬の顔を仰ぎ見た。
その眼は開かれ、こちらを向いていた。
けれどそこには表情が無かった。
こちらを向いている筈の邑瀬の眼は何も映さず、あたしを見ているのではなく。
怒りも哀しみも、もちろん喜びも浮かんでいないその表情。
「なんで」
語尾を延ばし、奇妙に優しい口調で彼は言葉を発した。
「邑瀬さ…」
「なんで俺なんかがいーの?」
緩やかだが、言葉を挟む余地のない不思議な話し方だった。
「こんなオッサンなんかさぁ。26だよ?みぅちゃんは幾つだっけ?ハタチになったんだったっけ。まだ、若いんだし。やめといた方がいいよ?」
--マダ、若インダシ。
いつか何処かで聞いたような台詞。
厭だ。
お願い。
そんな云いかたしないで。
「…あたし、もう子供じゃないです。若いなんて言わないでください」
「じゃ、なんで。同情?」
「違っ…」
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