Roots --あたしが私に還るとき
Roots --あたしが私に還るとき
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「みぅちゃん。俺ね、妹いないからこんなコト言うのもアレだけどみぅちゃんのことは妹みたいに大好きだし。こういう後悔はして欲しくないんだよ。だから…」
視界の斜め前には邑瀬のジャージのパンツの青色が見える。
ベッドに腰掛け、あたしを見下ろしながら話す声。
こんなに近くにいるのに、なんだか遠い。
埋められない、距離。
邑瀬とあたし。
澤村との距離よりも遠い。
「カレシとの遠距離は、シンドイだろって思うよ実際。でもだからって彼を蔑ろ(ないがしろ)にする理由にはならないんじゃねーかなぁ」
そう。
その通りだった。
邑瀬の言葉。
胸の内に深く傷を負った者だけが持つ優しさが、トゲとなってあたしに突き刺さる。
痛い。
「みぅちゃんは今、彼に心配かける状況にあるわけだからさ。この場所に居るってコトくらいは連絡しておかないと、ダメじゃないかなぁ」
麻痺し続け、ひそかに燻っていた良心が内側から弾けて醜く爛れた表面を覗かせる。
あたしは自分を恥じた。
そもそもからあたしは間違っていたのだ。
そんな簡単なコトに今頃気付くなんて。
あたしの精神は尋常じゃない熱を帯び、恥と焦りに翻弄され始める。
--イケナイ。
本当の自分の気持ち。
弾け出てしまう。
過去、そして現在。
記憶と願望。
時間軸がズレてゆく。
--アタシ…。
タダノ罪人ダ。
ソレモ、ハテシナク罪深イダケノ罪人。
弁解ノ余地モナイ。
◆
“懺悔”とは、
“自らの罪を認め、告白し、悔い改めること”。
あたしは、その時その場所でそれをすることを選んだ。
◆
「あたし、後悔なんてしません」
言葉は静かに流れ出した。
「あたしは彼を、本当には好きでなかったんです」
邑瀬の顔を見ることが出来なかった。
ただ自分に言い聞かせるように懺悔を続けるあたしの言葉を聴いても、邑瀬は何も云わず身じろぎもしない。
それでもあたしは吐き出し続ける。
自らの罪を。
「最初から、彼を好きではなかったんです。ただ、好きになってもらったコトがキモチ良かっただけ。思い上がって、彼の気持ちを利用しているだけ。このままだと、そういう自分を嫌いになって行くばかりだってわかったんです」
邑瀬の反応は無い。
あたしはキッパリと恐れを振り切り、邑瀬を見上げて言った。
「邑瀬さんが好きです」
邑瀬は膝に両肘を載せ、まるで祈りを捧げるように指を組み合わせていた。
その両の眼は閉ざされている。
--受け入れられない。
あたしはもう判っていた。
「…カレシと、ずっと寝てるんだろ?」
「えっ」
突然の直截な物言いにあたしはたじろいだ。
「みぅちゃんは、相手を好きじゃないのを胡麻化しながらでもカラダの関係は持てるんだよな」
絶句した。
自分自身が一番わかっていながら一番避けていた現実を、一番云われたくない人からの言葉で突きつけられて。
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