Roots --あたしが私に還るとき
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みぅ


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あたしと寝た男達のコトを少し書き記しておこう。
その必要があると思う。
書くべきことは、それほど多くはないけれど。


例えば、自分が童貞であることをさかんに主張し、あたしに誘われるのを待っていた男とは一度きり。

他には、コンパの日にいきなり居酒屋のトイレの前でキスをしてきた男や、

やたら大きな外車でホテルの駐車場に入ろうとして、車の右前部を壁に擦ってしまった男、

夜景フェチで、数ヶ所の展望台を廻った揚げ句に車の中でいきなり襲いかかってきた男。

…他は、省略。



そんな中で二人だけ、特別な男がいた。
その二人については、どうしても書かなければならない。


一人とは、うっかり寝てしまった。

実はその男とは既に高校生の時、有名私大附属高の学祭で知り合っていた。
あたしが短大に入ってからも、何故だか時々連絡をしてくる…。
ただそれだけの間柄だったのが、なんとなく暫くぶりに飲みに誘われて会った時に半ば強引に“喰われた”。

身体つきはヒョロリと細く猫背で、綺麗な顔をしていたがどこか崩れたような空気を身に纏い、あたしのタイプではない。
若いくせに、BALLYのセカンドバッグなんかを抱えているのも気に食わなかった。

その手はいつも氷みたいで。
初めての時、冷たく細長い指が陰核に触れるか触れないまま往復した時は体ごと震えた。

唯一、この男とはなかなか切れなかった。
そしてあたしのカラダと心に消し難い凍み(しみ)を残されることになる。
彼は後にも出てくるが、名は伏せておきたいので仮にDと呼ぶ。

Dは片親で、一緒に住む父親の関係から“ソノ筋”と繋がりがあった。
別に怖くはなかったが、面倒なことになるのも厭だったから無下に断れなかったりした。
一方でその頃、会計士などというお堅い難関を目指して猛勉強をしており、実際頭の回転が異様に速く、妙に鋭い男だった。



そして、もう一人--忘れられない男。

その男は、コンパで初対面の日にヴェルサスの派手なシャツを着てきて皆をびっくりさせた。
左頬の広範囲に、生まれつきという赤い痣があった。

あたしはその場違いな派手さと、意外に素朴でモノ怖じしないおおらかな気質を気に入り、すぐに彼に興味を持った。

名前は、邑瀬晋(むらせ・しん)。
あたしの友人のカレシと同じ草サッカーチームの一人だった。
地元国立大卒で、その時既に26歳。
ユーノス・ロードスターに乗っていた。

年上に惹かれるお年頃だったし、国立大出身のわりには垢抜けた外見と車を持っているコトがなにより良かった。
いやらしいハナシだけれど。

目立つ外見はラウンジでウエイターのバイトをしていたせいだろう。
微妙に同業種のアルバイトをしていたコトで話は弾んだ。

2回生の夏の終わり頃から数回彼とデートした。

内心心配だったが、彼は最初のようなド派手な服装をして来ることはもうなかった。
コンパの日の服は彼なりのシャレのつもりだったのだと、後に彼は笑って言っていた。

海の上に上がる打ち上げ花火を、遠くの埠頭から見たのを覚えている。

赤いロードスターの助手席にはいつもサッカーボールが置いてあった。

けれども何故だろう。
それ以外、どんな場所に行ったか、何を食べさせてもらったかなどがどうしても思い出せない。

それよりも彼と話した内容のほうがよく記憶に残ってる。

彼はその派手目な外見に反し、実は小学校の用務員(つまり公務員)という堅い仕事をしていて、バイトは副業。
当然、職場には内緒らしかった。

なにもかも話せば話すだけますます面白くて、不思議な男だった。

彼の部屋で一晩中一緒にいた日、何故だか彼は最後の一線を越えようとして来なかった。


そして皮肉にも--、その日をキッカケにあたしは本気で彼を好きになってしまったのだ。


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