Roots --あたしが私に還るとき
Roots --あたしが私に還るとき
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澤村には、既に嫁いでしまった10歳くらい年上の姉がいた。
澤村自身はかなり両親が高齢になってから生まれた子供だったので、溺愛されて育ったようだ。
親からの愛情には不足なかっただろう。
ただ環境が少し特殊だった。
よく出来た両親。
母親は看護婦でほとんど家には居なかったらしいし、父親は教頭や校長を歴任する多忙なベテラン教師だった。
自分だけのものとして、両親の温かみに甘えるコトがなかったのかも。
今なら、私は理解できる。
彼は、“ただずっと傍にいてくれる、静かで従順な存在”が欲しかっただけなのだ。
ペットみたいに。
◆
高校の卒業式、澤村はあたしを校門まで迎えに来ると言ってきかなかった。
窮屈に感じてやんわり断ったのだが、やはり彼は現れた。
白いマジェスタ。
コレ親父の車、と彼は云った。
卒業証書をもったまま、クラスメイト達に冷やかされながら渋々乗り込む。
『卒業式の打ち上げクラス会、誘われてたのに…』
高校生活最後の日くらい羽目を外して遊ぼう、とクラスの十数名で計画していたのだ。
「そんなの、行ったら駄目だよ。酒とか飲まされてどうなるか判らないだろ?」
澤村は事もなげに一蹴した。
確かに、高校生だってお酒くらい飲むコトもあったかもしれない。
でもそれがそんなに悪いコトとはその当時は感じられなかった。
しかも、澤村こそあたしにお酒を飲ませることだってあったし。
そのあたしの気持ちを察してか、彼は笑ってフォローしようとする。
「俺がいないトコロで、飲んで欲しくない。みぅは、酔うと色っぽいからさ?、心配で」
いつの間にか彼は、僕、ではなく俺、と云うようになっていた。
同時に、“心配”と口癖のように云っては、その頃からあたしの行動に様々な規制と干渉をするようにもなっていった。
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