Roots --あたしが私に還るとき
Roots --あたしが私に還るとき
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「あれ…?」
ヒロアキがもらす。呆気にとられたように。
冬至を過ぎてまだ間もない18時。
気の早い夜の闇は、しかし彼の姿を覆い隠してはくれなかった。
--澤村だった。
一体この寒さの中で、いつから彼はそこにいたのだろうか。
あたしは、言葉を失った。
「澤村さん、だよな。アノ野球部の」
ヒロアキの言葉に、辛うじて頷く。
「って、なんで…」
言いかけて息を呑み、
「俺、やべーじゃん。やっぱり今日は帰るわ」
苛立ちと失望を隠さずにそう言い捨てると、来た道を足早に引き返して行くヒロアキ。
あたしには引き止めるなんてできなかった。
澤村の視線から逃がれるように自宅の玄関のドアをくぐろうとしたあたしを、追い掛けてきた声。
「待って、ゴメン!待ち伏せするつもりは無かったんだ」
あたしは振り返った。
「ゴメン…。これを渡したかっただけだったんだよ」
小さな紙袋。
力の入らないあたしの手に、握らされる。
「お宅に誰も居ないみたいだったから、少し待たせてもらったんだ。驚かせて悪かった…カレシにも、悪いコトしたなぁ」
そう云って笑ってみせた。「いいえ…」
呟くのが精一杯だった。
何か云いたかったが、“ありがとう”でも“ゴメンナサイ”でもない気がした。
その夜、かけてきた電話で澤村は告げた。
--随分前から想っていた。入学してきた頃から見ていた。
もうすぐ自分は卒業してしまう、その前に伝えておきたかったのだ…と。
「ここまで来たんだから待つよ。待ってるから。ずっと。それだけは覚えておいて」
紙袋の中身は、誕生石の入ったネックレスだった。
あたし、誕生日なんて教えたっけ。覚えていなかった。
『待つ』って…何を?
戸惑いは膨らむばかりだった。
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