あもトイレ・愛の名作劇場 ?mari qui estime sa femme?
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あも


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部屋は最上階にあり、まるでホテルのスイートルームみたいになっている。ワンフロア全て借り主の所有物であり、このエレベーターでしか部屋の玄関に辿り着くことができない。知ってる人もいるだろうが、中にはこの最上階の存在を知らないマンションの住人だっているはずだ。以前、たまたま見たテレビから‘億ション’なる造語を知った時は、この部屋もそう呼ばれて間違いはないと些か鼻も高くなったものだ。

そのエレベーターに乗り、部屋へと昇る間も、彼は私に指一本触れてこなかった。私の想像の中では――もう挿入すら終えているというのに。私一人が淫らな気分になっているのだろうか?さっき外で抱きついたのも、車の中でのだらしない格好も、‘抱いてほしい’というアプローチだった。行為がご無沙汰なワケではないし、彼に不満を持っているワケでもない。ただ単純に、彼が好きなのだ。いつでもどこでも彼に触れていたいと思うし、情熱的に求められたい。それが例え車の中であっても、エレベーターの中であっても。

ただ彼は役職上、恐ろしいほど真面目な男で、‘セックスは家、またはそれ専用の施設で行なう行為であり、人目のある場所や公共の場で行なうなど言語道断’といった考えの持ち主だから実現するのは難しい。別にその理念が煩わしいとか、古くさいと嘲笑してるワケではない。むしろ尊敬しているし、やはりそういう彼に私は惚れたのだ。場所周囲関係なく盛る男よりはずっと清廉で色っぽい。ただ、たまには辛抱仕切れず私を求めてくれたら…という願望はどうやっても消せない、という話。
想像するだけで深奥が疼く。


部屋の鍵を開け、完全に二人だけの世界になった、その時初めて彼は私を抱き寄せ、激しく唇を貪ってきた。私も彼の胸に全体重を委ねるように抱きつき、待ちに待っていた彼の舌に吸い付く。苦い煙草の残り香に彼を感じる。昔から煙が苦手だったので、煙草なんて吸った事も、吸いたいと思ったこともないけれど、彼の唇から燻ぶる煙草なら何本だって吸える。苦くて甘いだなんて少女漫画みたいな発想だけれど、このキスにはピッタリ合うキャッチコピーだ。私はまず上着を、玄関だということに構わず脱ぎ捨てた。彼の隆々とした逞しい肱【カイナ】が私の身体をまるでぬいぐるみを持ち上げるように抱き上げ、そのまま二人、リビングへと縺れ込む。私は腕と脚をしっかり彼に巻き付け、何度も彼と口付けを交わした。
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