LaZoo掲示板
/
カオス・ストーリー2
/
3
ベストピクチャー
第2話
「黒澤?!ちょっと!」
廊下から篠田先生に声をかけられ、顔を向けると手招きして俺を呼び出す。
めんどくさいと思いつつも、行かないともっとめんどくさいとわかってるから、渋々立ち上がった。
「なんかしたかな?。菊地! また明日なっ♪」
「う、うんっ」
早く!と、やたら急かす篠田先生に、俺はうんざりした顔で近づいていく。
「もうちょっと…話したかったな」
菊地が何か言った気がしたが、はっきりとは俺の耳に届かなかった。
「美術室にこれ、運んで」
篠田先生のいう『これ』とは数人分の水彩絵の具一式。
美術部の顧問でもある篠田先生は用事ができたらしく、授業で寝てたのを理由に俺を荷物運びに指名した。
「はいはい、わかりましたよー」
「さっさと行く!」
「は、はい!」
この女、鬼だ。荷物で両手が塞がっているのをいいことに、俺の急所…いわゆる大事な部分を蹴りやがった。
これで使えなくなったら、この女を一生恨むことにしようと誓った。美術室につくと俺の任務は終わった。
絵の具セットを机に積んで、そそくさと帰ろうと思ったが、たまたま視界に入った一枚の絵が、俺の足を止めた。
見覚えのない女の子が一心不乱に鉛筆を動かしていた。
彼女の手首が揺れる度に、俺の目はキャンパスに奪われていった。「いい…絵だね」思わず、口にしてしまった。
女の子は声にビクッと背筋を震わせ、ハッと振り返った。
驚くほど綺麗な顔をしてた。
透き通るような白い肌に、見ていたら吸い込まれそうな瞳。
初めて、胸が高まったのを感じた。「あ、ありがとう…ございます」絵を褒められて嬉しかったのか、彼女は笑った。
その顔がまた可愛らしく、俺もつられて笑った。
「えっと…君、名前は?」
初対面の女の子にどう接していいかわからず、あたふたする自分に凄く情けなさを感じた。
「渡辺、麻友です」
「俺、黒澤裕也。よ、よろしく」
初恋なんて知らない。俺を惚れさせたら凄い。そんな凄い女は、ここにいた。俺の初恋は、
ここにあった。
NEXT
タイトルトップ
TOPへ戻る
LaZoo掲示板
/
カオス・ストーリー2
/
3
トップ
総合テキスト投稿&無料HP作成
(C)
Chaos-File.jp