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カオス・ストーリー23

ベストピクチャー
第2話

「黒澤?!ちょっと!」

廊下から篠田先生に声をかけられ、顔を向けると手招きして俺を呼び出す。
めんどくさいと思いつつも、行かないともっとめんどくさいとわかってるから、渋々立ち上がった。

「なんかしたかな?。菊地! また明日なっ♪」

「う、うんっ」

早く!と、やたら急かす篠田先生に、俺はうんざりした顔で近づいていく。

「もうちょっと…話したかったな」

菊地が何か言った気がしたが、はっきりとは俺の耳に届かなかった。
「美術室にこれ、運んで」

篠田先生のいう『これ』とは数人分の水彩絵の具一式。
美術部の顧問でもある篠田先生は用事ができたらしく、授業で寝てたのを理由に俺を荷物運びに指名した。

「はいはい、わかりましたよー」

「さっさと行く!」

「は、はい!」

この女、鬼だ。荷物で両手が塞がっているのをいいことに、俺の急所…いわゆる大事な部分を蹴りやがった。
これで使えなくなったら、この女を一生恨むことにしようと誓った。美術室につくと俺の任務は終わった。
絵の具セットを机に積んで、そそくさと帰ろうと思ったが、たまたま視界に入った一枚の絵が、俺の足を止めた。

見覚えのない女の子が一心不乱に鉛筆を動かしていた。
彼女の手首が揺れる度に、俺の目はキャンパスに奪われていった。「いい…絵だね」思わず、口にしてしまった。
女の子は声にビクッと背筋を震わせ、ハッと振り返った。

驚くほど綺麗な顔をしてた。

透き通るような白い肌に、見ていたら吸い込まれそうな瞳。

初めて、胸が高まったのを感じた。「あ、ありがとう…ございます」絵を褒められて嬉しかったのか、彼女は笑った。
その顔がまた可愛らしく、俺もつられて笑った。


「えっと…君、名前は?」


初対面の女の子にどう接していいかわからず、あたふたする自分に凄く情けなさを感じた。


「渡辺、麻友です」


「俺、黒澤裕也。よ、よろしく」
初恋なんて知らない。俺を惚れさせたら凄い。そんな凄い女は、ここにいた。俺の初恋は、
ここにあった。
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