君と歩いて行く道

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カオス・ストーリー23
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「凛花(りんか)……いらっしゃい。」

秋から冬へと季節が変わる頃、彼女は俺の家にやって来た。俺の親父は社長の身でありながら単身赴任なので俺は、ほとんど一人暮らしみたいなものだ。

凛花と俺は幼馴染み……。そして、俺と凜花は共に母を子供の頃亡くしている。

「これから…お世話になります。良輔…君。」

彼女は大きな荷物を抱えながら小さく笑って頭を下げた。

「あれ?その眼鏡…どうしたの?…イメチェン?」

彼女の荷物を受け取りながら俺は聞いてみる。

「あっ…ええ。ちょっと目が悪くなってしまって、偶々(たまたま)家にあったから……」

静かに……どこか躊躇いがちに彼女は答えた。

子供の頃…親父と君のお父さんによって、俺達は出逢った。

不思議と君にはいろんなことを話すことが出来た。

子供の頃の君は誰よりも可愛いくて、俺に笑いかける笑顔はまるで天使の様だった。

それは今でも何一つ変わっていない。その華奢なその美しい姿は、きっとどんな男をも魅了するだろう。

非がつけられない美人とはまさに彼女のためにあるようなものだ。しかも流暢な話し方に、しとやかな優しい性格。

そんな君に俺は幼い頃から出会っていたんだね。


許婚。それは君のお父さんと親父が勝手に決めた。でも、そんな事なんか関係なく君が好きで……ただ自分の側にいて欲しかった。


二年前、君と君のお父さんが事故にあった。
奇跡的に君は助かったけれど、お父さんは亡くなってしまった。


落ち込んでいる君に何もしてあげられない自分が悔しかった。そして、そんな君を見ているのがとてもつらかった。

だから、君を独りにはさせないって決めた。いや、誓った。


けれど、後になって知らされるまで俺は気付かなかった。君はまわりから隔離されている様で恐かったんだってコトに……
君の目がほとんど見えてないってコトに……


あの日、医者から告げられた言葉に俺は目の前が暗くなる様なショックを受けた。事故の後遺症で彼女は左目を失明、そして右目もかなり視力が落ちてしまったと聞かされて……

それなのにそれを悟られないように彼女は普段通りを装っていろいろと俺の面倒を見てくれていたのだった。


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