蜘蛛のイトは解けない
蜘蛛のイトは解けない
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ここ最近、食品業界は賑わっている…。と言っても決して良い意味ばかりではないが。
いや、むしろ悪い話題のほうが多いだろう。
某乳製品屋がやらかしたせいで消費者の意識がかなり高くなっている。まあ、悪いことではない。かく言う俺はこの仕事(運送屋、特に食品を主としている)に就くまでは狂牛病とか鳥インフルエンザなんて関係ないことだと思っていた。
しかしながら、我が社の最大(唯一と言っても過言ではない)の取引先が与えて下さる仕事は、各県のスーパー等に国内産とされる牛肉を運ぶことだったりする。そう、国内産の牛肉…。はっきり言わせてもらえば、よっぽどの食通でもなければ肉の味なんてわからないものだと思う。いや、俺は安い肉しか食ったことはないのだが、きっと世間の人達もそうであるはずだ。
何故なら、うちが運んでいる国内産牛肉様は実はオーストラリア出身だからだ。しかしながら、そのオーストラリア出身の国内産牛肉様はなかなか消費者様方に人気で、俺には信じられない価格でスーパーに並び、食卓に並ぶ。
結局は、味のわからない人間は騙されていることも知らずに高い肉を食べた、という自己満足で腹を満たしているわけだ…。
まあ、知らぬがなんとやらで俺だって何時何処で騙されているかわかったもんじゃないが。
悪いのは騙す方であり、知っていながら黙っている俺も同じ穴の狢なんだろう。しかし、その狢達の巣の中には人間になりたいと足掻く者もいる。俺はそのうちの一匹を知っていた。そいつは、うちに仕事を発注してくる人間で、「真田(仮名)」という三十路に入りたての独身男だ。
最初に言うが、真田は消えた。行方不明だ…。いや、関係者は奴がどうなったか知っているんだが…。お前、本当に聞きたいか?」
俺は悪友に言った。
「無論、聞くよ!全部話してくれ!」
…聞くまでもなかったか。
「いいだろう…、そのかわり肉、食えなくなるぜ?」
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