講談・日本霊異記＊一段【雷を捕えた男の話】

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こうしてめでたく(？)宮に仕える身になった栖軽でありますが、まあ根が呑気な男でございますから失敗ばかり。
温厚で悪い人柄ではないのですが、たいして出世欲もなく、子供たちの面倒を見る傍ら、のーんびりと宮廷ライフを過ごしておりました。

こんな栖軽を見た宮内の者たちにしてみれば、虫の居所がよろしくない。彼を揶揄する声も流れます。
また同時に、栖軽を仕える雄略天皇自身の政治的手腕さえも疑問があがるほどになり、天皇はこの始末にいささか頭を悩ませておりました。

そんな折、その『事件』は起こります。

あるとき、栖軽が子供たちと蹴毬<けまり>遊びをしていたときのこと。

子供が蹴った毬がポーンと高く跳ねあがって、宮殿の中に入りこんでしまいました。
転がる毬を追いかけて、栖軽は宮殿の奥へ奥へ。

宮殿の奥の間には太極殿と呼ばれるところがございまして、まぁいわゆる寝室でございます。
時の権力者の眠る場所。もちろん何人たりとも立ち入ることまかり成らぬ厳粛なところ。

あろうことか、栖軽は夢中になって毬を追うあまり、いつの間にかこの太極殿に入り込んでしまいます。

ちょうどそのころ、寝室では天皇と皇后さまが寝ておられた。
…ただ…寝ておられたわけではございませんで…
そこはまぁ、現人神<あらひとがみ>とはいえど男と女…。『富士の高根に降る雪も、京都先斗町に降る雪も…』でございましてぇ…。

「なぁ、ィィだろ？？お前♪」

「ゥフン♪こんな真っ昼間から、およしになってくださいましな」

「そう言いながら…ここをこうしてこうするとぉ…こぉか♪」

「ィャ?ン、雄略さまったらぁん…やめないで♪」

なぁんてことをしております。

そんなところへどこからか毬がひとつ、コロコロコロっと転がってきた。
はてもなんぞやと、すでに半裸の皇后さまがそれを拾いあげると、そこへ栖軽がドタドタドターっと駆け込んできたもんだからさあ大変。

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