真冬のこいびと
真冬のこいびと
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私がその『のえる』という喫茶店の扉を開けると、コーヒーのいい香りがした。私は入り口から少し離れた窓際の、二人がけのテーブルに腰掛けた。
私は窓際の席が大好きで、いかなる場所であっても窓際に座りたいと思っている。別に、道行く人に私の姿を見てほしい、とかいうのではなく、ただ単に外を眺めるのが好きだから。
「いらっしゃいませ。」
三十代前半くらいの女の人が、水の入ったグラスを運んできた。
「あの、コーヒーを一つ下さい。」
「かしこまりました。」
彼女が運んできた、きれいに磨かれたグラスの水には、丸い氷がコロンと浮かんでいてかわいらしかった。
「コーヒーです。ごゆっくりどうぞ。」
しばらくして、さっきの彼女がコーヒーを運んできた。私はふと、カップをテーブルに置く彼女の手に目がいった。爪はきれいに切られ、マニキュアのたぐいもしていない。感じのいい手だと思った。マニキュアの塗ってある手が嫌いだというわけではないが、食物商売の人のマニキュアは不潔感があってどうも受け付けない。私の偏見かもしれないけど。だから、彼女の手はいいなと思った。
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