真冬のこいびと
真冬のこいびと
浅野花火


7ページ目

 「もうすぐクリスマスだしポインセチアの鉢を一つ買います。小さい方の鉢。」
 「ありがとうございます。この鉢は寒い所に弱いから、暖かい所に置いてやって下さいね。」
 と、彼はポインセチアの鉢を袋に入れながら言った。彼のきれいな指がポインセチアの鉢をとても大切な物のように扱うのが印象的だった。この鉢を、彼の分身とは言わないにしろ、私が彼の雰囲気を感じながら暖かい所で育てるのを想像したら、心が温かくなった。
 「あ、僕四時でバイト終わりなんです。一緒にお茶しましょう。この鉢は僕が持っていきますので。あ、このあと何か予定がなかったらの話ですが。」
 彼は、肝心の私の都合を聞き忘れたのを恥ずかしがり、苦笑した。
 「このあとは何もありません。だから待ってるわ。もう少しお話したいし。」 私は浩行と接する時間が少しでも伸びたので、心の中で歓喜していた。
 私の浩行に対する第一印象は最悪だったが、彼の指が美しい事や、若さゆえの浮ついた感じが無い事、花屋にしっくりくる雰囲気を持っている事などに好感を持っていた。今考えると、どれも恋に落ちるには不十分な物だと思う。まだあまり相手の事を知らないうちだったのもあるが、何よりも浩行の持つ雰囲気に惹かれたのだろう。
←前 次→
最新
採点
戻る トップへ
総合テキスト投稿&無料HP作成
(C)Chaos-File.jp