真冬のこいびと
真冬のこいびと
3ページ目
別に浩行とは劇的な出会いだった訳ではない。
ある資格試験で私と浩行の席が隣同士で、筆記用具を忘れた浩行に、私がシャープペンシルを貸した。たったそれだけのきっかけだ。
浩行は試験が終わった後で、シャープペンシルのお礼にと私を食事に誘った。
筆記用具は試験官に借りれない事もなかったし、そのお礼に自然に食事に誘ってくるあたりに下心を感じた。
私は、大切な試験の日に筆記用具を忘れるなんて、なんてまぬけなんだろうと思ったし、虫の好かない男だと思ったが、ごちそうしてくれるというのだからいただこうと、ごちそうしてもらう事にした。
浩行と昼ご飯を食べたのは試験会場にある、食券を買って食べる食堂だった。 「何を食べますか?」
「じゃあ、エビフライ定食を。」
食事に誘っておいて食堂なの、と思ったが、下心ではなく本当にただお礼がしたかったのかしら、とも思った。
食券の機械のボタンを押す指がとても長く美しかったのを覚えている。
採点