真冬のこいびと
真冬のこいびと
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「ただいま。」
家の玄関の扉を開けると、夕ご飯の香りとともに母の声が返ってきた。
「おかえりなさい。雪、すごく降ってきたわね。」 老人の匂いがしない私の家に、私は心底ほっとした。雪の中を歩いて来た私の体の中に、温かな空気が入っていくのがわかった。寒さのせいだけではない、恐怖心から来る冷たさが溶けていくようだった。
「もう少しで夕飯だからね。」
「うん。」
私は階段を登り、自分の部屋に入った。お香の香りがかすかにした。
私は普段はお香など焚かないが、黄色の、すすきと満月が書いてある小さな箱に入ったお香に、なぜか惹かれて買ってしまった。
二、三日前に焚いてみたが、煙がのどにしみて私には合わなかった。
でも時間がたって、ふわりとかすかに香る匂いは好きになった。秋の香りがした。
秋の香りがかすかに香る部屋に入ると、私はベットにごろりと横たわった。心が重く、体までがズシリと重いような気がした。
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