真冬のこいびと
真冬のこいびと
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彼の家は、一戸建の古い、青いトタン屋根の建物だった。
「ここが僕の家です。とりあえず中に入って。」
ガラガラと古い引き戸を開いて玄関に案内されると、他人の家特有の生活の匂いがした。彼のいう祖母の香りというのがわかった気がした。
「ばあちゃん、今帰ったよ。」
「おかえりぃ。」
奥の部屋から声だけが彼を迎えた。
「あがっていきますか。」
「ううん。傘だけ借りてもいいかしら?そろそろ夕ご飯の時間だし。」
「そうだよね。じゃあこれ使って下さい。」
そう言うと、彼は玄関の傘入れに入った、緑と黒のチェックの地味な傘を私に手渡した。ビニール傘とかではないのが、妙に彼らしいと思った。
「ありがとう。」
「いえいえ。」
「あ、次はいつ会えるの。」
私は連絡先も知らずに、もやもやと会えない日々を過ごすなんていやだった。今日は晴れて恋人同士になれた日なのに。
「僕まだ連絡先聞いてなかったよね。これ。」
そう言うと、彼はズボンのポケットから携帯電話を出し、自分の番号とアドレスが書いてある画面を私に見せた。
私もバッグから携帯電話を取出し、彼の番号とアドレスを登録し、自分の番号を入れたメールを彼あてに送った。そして、すぐに老人の香りがする家の中とは不釣り合いな電子音が鳴り響いた。
「ありがとう。いつでも連絡下さい。僕もしますから。」
「私もするわ。それじゃあ、さよなら。」
「さよなら、気を付けて帰ってください。」
少ししぶい玄関の扉をガラガラと閉めて、私は家への道を歩きだした。
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