真冬のこいびと
真冬のこいびと
浅野花火


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 「僕が払いますよ。」
彼は伝票を持って、支払いに行ってしまった。
 私の方が年上だから、とかこの間もごちそうになったからとかの理由で私が支払いたかったが、彼の自尊心は痛いほどわかっていたので口に出さなかった。

 
 喫茶店を出てから、傘を持っていない私達は足早に歩いた。その間も、まるで当たり前かのようにポインセチアを持っている彼を、私はいとおしいと思った。
 その間はただもくもくと歩き、会話はあまりなかった。私はこれからどうするかや、帰るなら帰ると伝えてから喫茶店を出れば良かったと少し後悔した。
 私は彼の隣をただついて歩いた。

 「このままでは二人ともぬれてしまいますね。」
 彼は真顔で私の方を向いた。
 だからホテルで休んでいきましょう、なんて言われたら、私は彼を嫌いになっていただろう。肉体関係をもつには早すぎたし、なにより彼の雰囲気にひかれた私の目が誤っていた事になる。私の精神ではなく、体にひかれる男など嫌だ。
 
 「僕の家はすぐそこだから、傘を借りていって下さい。」
 彼は申し訳なさそうに、まるで私達が雪にぬれているのは自分のせいだと言わんばかりの顔で私に言った。
 私はほっとした。体を求められなかった事にではなく、彼の温かな雰囲気をまた感じ取る事ができたから。
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