繋がりゆく想い……
繋がりゆく想い……
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それから何をするでもなく、日々は過ぎて行く。食べても上手いと感じなくなったから、俺は殆ど食事も取らなくなった。時折、飲み物を買いに出るか、痛み止めの薬を病院に取りに行く以外は外出すらしなくなる。
あれからどれくらい経ったんだろう、もう智子との事も遠い昔の様に感じる様になっていた。
「今日は薬を取りに行く日か……」
今更、薬なんてとも思う。だけど、この行為それだけが僅かに心を繋ぎ留めている様な気がしていた。
面倒臭いと思いながら靴を履いて玄関を出る。すると途端に激しい目眩に襲われて、俺は崩れ落ちた。
「……うき……」
誰かの声が聞こえた気がしたけれど、確かめる事すら出来ずに俺はそのまま意識を失った。
暗闇の淵から浮かび上がった意識が言葉を紡ぐ。
ここはどこだ?俺は死んだのか?
意識を取り戻した俺は重たい瞼をこじ開ける。すると俺を覗き込む白衣の女性と目が合った。
「気が付かれましたか?今、先生を呼んで来ますので安静になさってて下さいね?」
先生?……じゃあ、ここは病院か?……なんだ、まだ生きてんのか俺……
安堵とも何とも言えない溜息をついてベッドで休んでいると、見覚えのある医者が俺の側にやって来た。
「気が付かれましたか風見さん……危ないところでしたよ。従姉妹のお嬢さんが発見しなければ、どうなっていた事か……」
「従姉妹?」
「ええ、智子さん。従姉妹なんですよね?」
医者の視線の先を追うと、そこには俯いて立っている智子がいた。
「ええ、確かに彼女は俺の従姉妹ですよ。」
軽く咳ばらいをして頷く俺に、医者は安堵の表情を浮かべた。しかし、すぐに真顔になって言う。
「風見さん……言いたくないのですが、薬で抑えるのもそろそろ限界です。出来ればこのまま入院された方が………」
「その前に先生、コイツと二人で話したいんですが……」
「構いません。お話しが済んだらナースコールして下さい。でも、出来れば短めにお願いします。」
そう言って医者は病室から出て行った。そして、中に残されたのは俺と智子だけ……。智子は何も言わず俯いている。俺と目を合わそうともせずに……
「もう来るなって言った筈だよな。」
先に口を開いたのは俺だった。その言葉に智子はビクンと体を震わせる。
「従姉妹なんて名乗りやがって……」
「ごめんなさい……あたい……」
微かに震える声。それは……
「全部、知っちまったんだな?」
それを意味していた。俺の問いに智子は小さく頷く。
「だから忘れろって言ったんだ。智子、顔を上げろよ。」
ゆっくりと顔が上がっていく。そして、俺を見つめる瞳は濡れていた。
「泣くな馬鹿……」
「……祐樹……」
「お前を突き放した理由はわかったろ?もう一度言う、もう俺に関わるな。」
唇を噛み締めたまま、智子はぽろぽろと涙を零す。
本当は怒鳴ってでも追い返すつもりだった。けれど、素直に涙を流す智子に俺の口許はうっすらと笑みを浮かべてしまう。
「お前にそんな顔してほしくなかったよ……馬鹿だなお前……知らなきゃよかったのに……」
「あ、あたいね……やっぱ、祐樹のコト忘れられなかった。何度もこっそり家まで行ってたの。あの日、久しぶりに祐樹を見れて帰ろうとしたら……祐樹が、祐樹が……」
話しながら、俺が倒れた時の光景を思い出してしまったのか、智子は声を詰まらせていた。
「もういい……何も言わなくていい。智子、先生を呼んで来てくれ。俺は家に帰る……」
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