繋がりゆく想い……
繋がりゆく想い……
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「ゆ、祐樹っ!!大変!医者呼ばなきゃ!じゃなくて消防車!!?」
「救急車だろ?智子。」
「あ!そうよ!!110番しなくちゃ!!」
「それじゃ警察が来ちゃうだろ?とにかく落ち着けって……」
「だ、だって祐樹、血がドバーッ!!って……」
「大丈夫だから落ち着けって……な?」
本人よりもうろたえている智子が妙に滑稽で、思わず吹き出しそうになるのを俺は堪えた。もっとも、血を吐きながら笑っていたら、気が狂ったと思われ兼ねないけれど……
俺はタオルで手の平と口を拭って汚れた服を手早く着替える。気を鎮める様に大きく深呼吸していると、恐る恐る智子が尋ねてきた。
「祐樹、ホントに病院行かなくていいの?」
「ああ、大丈夫だ。なぁ智子……お前、明日には出てけ。そしてもう、ここには来るな。俺のコトは忘れろ……わかったな?」
「な、なんで急にそんなコト言うんだよ。嫌だよ、あたい……」
「理由なんかどうでもいい……俺が決めたんだ。もう寝ろ。」
それだけ言って、布団に潜ると俺は背を向ける。何度か智子が話し掛けてきても、俺は一切応えなかった。やがて諦めたのか智子は何も言わなくなる。そして次第に息苦しさも治まり、眠りに落ちた俺が次に目を覚ました時、ベッドの中に智子の姿は無かった。
「そうか……帰ったんだなアイツ……」
たった三日間の同居人……それだけのコトなのに何故か無性に切ない……
「ん?なんかコゲ臭いぞ……」
俺はベッドから起き上がり、リビングへ向かった。段々と臭いが強まっていく……
……ガチャ……
「あ、祐樹おはよ!」
「と、智子!?お前何やってんだ?」
どっから引っ張り出したのかわからないが、エプロン姿の智子は俺が尋ねると顔を赤らめながら俯いた。
「最後だからさ、あたいお礼に朝ごはん作ろうとしたんだけど……失敗しちゃった。」
そう言って所在無さげに智子は縮こまった。その言葉に視線を流すと、成程テーブルの上には、崩れた目玉焼き……
真っ黒コゲのトースト…
千切りだかザク切りだか、わからないサラダ……
そして、生まれてこのかた包丁なんて握ったコトなんかないんだろう、智子の指は絆創膏だらけだった。
「こういうお礼だったら、祐樹は怒んないって思ったんだけど……。あたい、何やってもダメだね。」
そう言って淋しげに笑う智子をよそに、俺は黙ってイスに座るとトーストをつまみ上げて噛りつく。
「ダ、ダメだよ食べちゃ……お腹壊すよ?」
「いやいや、なかなか香ばしくって上手いよ……うん、上手い……」
俺がガリガリとトーストを噛っていると、智子が消え入りそうな声で呟いた。
「ホントに優しいんだね……ありがと、祐樹……」
本当は聞こえていた……だけど、聞こえない振りをして俺は智子の作った朝食を食べ続けていた。
「ねぇ……ホントに来ちゃいけないの?」
「ああ……」
「どうしても?」
「ああ、どうしてもだ。」
「わかった……じゃあ行くね。」
「元気でな……」
智子を玄関先で見送り、俺は扉にカギを掛けた。
カシャン……
その音は心の奥にまで響く。まるで、外界と自分を隔てる様に……
ほんの少しだけ、楽しい気分を味わえた。持って行く想い出にはちょうどいい……俺はそんな風に思っていた。
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