クリスマスイブ
クリスマスイブ
闇の案内人


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君とネットで知り合ったのは、約2ヶ月前……ちょうど街に今年初めての木枯らしが
吹いた頃だった。
メールのやりとりを続け、すっかり意気投合した二人は、クリスマス・イブの今夜
初めてのデートをすることになったのだ。
高層シティ・ホテルのロビー……待ち合わせの時間、きっかりに君はやってきた。
打ち合わせ通りの服装……ベージュのツーピース・スーツに白のタートル・ネック・
セーター、ストッキング……胸には目印に黄色い造花のブローチ……シックな
服装は上品な落ち着きを感じさせる。
ちょっと不安そうに辺りを見回し、ソファーの一つに腰を下ろす様子を、僕はじっと見守った。
ホテルのロビーには、派手に着飾ったミーハーで蓮っ葉な若い娘たちが、嬌声を上げて
何人かたむろしているが、そんな娘たちに比べはるかに好感が持てた。
僕は君が自分のイメージ通りであったことにほっとし、一方で何だかどきどきする
気持ちを押しとどめられなかった。
僕は自分も目印の薔薇の花を携え、君の方へと近づいていった。
「こんばんは……」声をかけられた君は、はっとして顔を上げ、僕の手にある薔薇の花に気づき、
続いてぽっと頬を染めた。

「こんばんは……はじめまして……」
「え……?」
「何だか……恥ずかしい……ひでちゃん……ですね?」
僕はにっこり笑って頷いた。

「ひでちゃんだよ……はじめまして……」
「ああ……よかった……」
「え?……何がよかったの……?」
「うふふ……」
君もにっこりと笑うと立ち上がった。二人は初めて、間近に顔を合わせた。
「思っていた以上に……素敵……!」
「はは……化け物でも現れると思ったの?」
「ちょっと怖かったの……どんな人なのか……」
「僕の方こそ……期待通りの美女が現れて、感激しています!」
「ふふ……相変わらず……お上手ね……」
最初の緊張感がとれてしまえば、もう二人は旧知の仲だ。僕がそっとひじを君に
向けると、君はすぐに腕をまわしてきた。

「じゃあ……行きましょう……」
「ええ……」
そうして寄り添って歩く二人の姿は、とても今日初めて会ったようには見えない。
エレベーターを使って最上階のレストランへ……。
リザーブしてあった席に案内されると、君は眼下の夜景に目を輝かせた。
「うわあ……こんなにきれいだったなんて……」
「ここは、初めて……?」
「ええ……」にこにこしながら君は頷く。
僕はそんな君の幸せそうな顔を見るだけで、自分も幸せだった。
食事も最高だった。ワインを飲みながら会話も弾む。
やがて最後のデザートをたいらげ、僕はナプキンを畳んで煙草に火をつけた。
ワインにほろ酔い加減の君は、少し頬を紅潮させますますセクシーだ。
僕の目は、ついついセーターを盛り上げている胸の膨らみに、釘付けになってしまう。
君はそんな僕の視線に気づいているのかいないのか、妖しく微笑んで僕を見つめ返す。
「ひでちゃん……」
「え?……」僕は少しうろたえたように答えた。
変なとこばかり見つめていたのが、ばれてしまったのかと思ったのだ。
「今夜はありがとう……」
「ああ……おいしかった?」
「食事も、ワインも……最高だった……」
「よかった……」
「それに……」
「それに……何?」
「紳士だから……」
「え?」
「ひでちゃんが……何だか嬉しくって……」
「ふふ……まだ狼に変身するかもしれないよ……」
僕がそう言うと、君はしばらく間をおいた後、小さな声で言った。
「……変身して……」
「……」しばらく僕は、君の言葉が信じられなかった。
いくらメールでお互いのことを知っているとは言え、会ったのは今日が初めてなのだ。
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