娘
娘
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「米軍?レエルさん、それって……」疾走するポルシェの中、サヤカの声が響く。
「ああ、ただ米軍が悪いわけじゃないよ、いくら何でも」相変わらずのスピードを軽々と操り、話すレエル。
「なら、どうして?」(マキ、ナッチ、一体……?)「米大統領の選挙の事、知ってますか?」突然の質問に答えられないサヤカ。
「大統領が変わると、日本の基地司令官も変わるのです」言葉を続ける男。
「その家族も……。米国に帰ります、明日の朝に……」
走る冷凍車の中……。
「マキ、どうして米軍?」愕然とする安部。
「司令官の息子が……、真里たちと横浜に買い物に行った時に……」ゆっくりと話すマキ。
「辻と?」
うなずくマキ。
「あと、加護と……。その時、真里が赤い薬で……」(赤い薬……)安部は思い出す、あの粉を……。
「催眠薬だって、真里、私達をかばって一人で……」マキの目から溢れる涙。
「私とナッチが狙いだって……、親しい大統領候補が勝てばアメリカに帰るから、その前にって」
「レエルさん、ならあの黒人は?」サヤカの声。
「バカ息子の友達かな?ついでに言えば、この車もバカ息子のモノ」なぜか嬉しそうなレエルの声。
「あの黒人が鍵持っていたから、借りた。いい車だよね」踏み込まれるアクセル。
「レエルさん、追いつけるでしょうか?」心配そうなサヤカの声。
「五分五分かな?黒人に聞きだした所、冷凍車だそうだから速くは走れないはずだが……」レエルの真剣な声。(無事でいて欲しい……)サヤカは思う。
『ガタン』突然、大きな揺れが倉庫に走り、冷凍車が停まる。
「マキ、大丈夫?」ささやく安部。マキは痛む腕を抱えながら頷く。『ギギギ……』きしむ音をあげて、扉が開く。流れ込む冷たい外気。
「二人とも早く降りて……」聞いたことの無い声、アクセントの少し狂った日本語。じっと安部とマキを見つめている、一人の白人。
「でないと、また殴るよ……」薄笑いを浮かべたままマキの腕を見ている。(おぞましい)安部は心の底から思った。
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