娘
娘
闇の案内人


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広い部屋の中……。
(泣いている暇は無い)崩れ落ちそうになる体を、
必死で支えるサヤカ。
その時、低く冷静な声が問い掛けてきた。
「古藤さんと安部さんは?」
気持ちを、落ち着かせ答える。
「ナッチはわかりません。マキは、男に……」
(ナッチも関係しているの?)
驚きながら、答えるサヤカ。
「下か……」つぶやき、突然ドアに向かい走る男。
それを追うように、ついて行くサヤカと中澤。
部屋を飛び出し、急いで階段を駆け降りて行く……
(もうすぐ、下の階……)思いながら、
階段を走るサヤカ。
突然、前を走る中澤が立ち止まった。
「レエル、さん……」驚き、つぶやいている中澤……。
サヤカも見た……。
3メートル程の距離をとり、
向かい合う二人の男。
一人は、中澤にレエルと呼ばれた男、
黒いコートのポケットに手をいれ、
無表情で立っている。もう一人は、
体格の良い黒人の男、
リズム良く体を揺らしボクサーのように構えている。
中澤とサヤカを見て、
淫らな笑みを浮かべる……
嫌悪感……。(この男が、マキ達に暴力を?)
湧き上がる怒り、恐怖。
そんなサヤカの思いも知らず、
棒立ちのまま、間合いをつめるレエル。
薄笑いを浮かべつつ、
レエルに向かい口を開きかける黒人。しかし……
『プシュッ』自転車のタイヤから空気の抜ける時のような、
小さな音……。突然バランスを崩し、
前へ倒れこむ黒人。
そのアゴに向かい蛇の様に伸びる、レエルの足。
辺りに漂う、焦げ臭い匂い。
横向きに倒れ、完全に失神している黒人……
安部なつきは、夢を見ていた。
懐かしい、子供時代……。
母に膝枕をされている夢。ゆっくりと目覚める安部……。
誰かに膝枕をされていた。
「ナッチ……、大丈夫……?」
心配そうな、聞き覚えのある声……。
「マキ……?」完全に目を覚ます。
暗く、狭い場所。ガタガタと揺れる
「車の中……?他の娘。達は?」
どこか苦しそうに答えるマキ。
「私達だけ……。ここは、たぶん冷凍車を改造した車……」
確かに……そこは暖かかったが、
元冷凍車の冷凍庫だった。
膝枕から、身を起こしマキを見つめる。
改造して取り付けられたのか、
天井に薄暗い明かりが灯っている。
光に映るピンクのノースリーブから見える白い腕。
しかし、その両肩から二の腕にかけて、
何かで叩いたような痣が……。
「マキ……」言葉が出ない……。
「大丈夫です!」微笑むマキ。
しかし、言葉とは裏腹に、
流れ落ちる涙……。
思わず、優しくマキの頭を胸に抱く安部……。
見つめ合う……影。
どちらともなく、ゆっくりと顔を近づけあう……
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