あもトイレ・愛の名作劇場 ?mari qui estime sa femme?
あもトイレ・愛の名作劇場 ?mari qui estime sa femme?
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か細い腕には何本も管が差し込まれていて、これでこの人はこの世に留まっているのだと、少し感慨深く見つめていた。左手の薬指には誓約が色褪せていない、金色の細い結婚指輪がはめられたままだ。その手がピクリとも動かないのが悲しい。
‘もぅ、好きで仕方ないのね…’
あの看護婦の言葉が私の中で反芻していた。怪物だと思っていた昨夜の大男の、悲しい恋。きっと昨日も、見舞いの帰りに私を助けてくれたのだろう。病院への道の途中に、あの忌まわしい裏路地があったのを思い出した。
「…誰だ!」
一瞬肩が竦んでしまうような圧迫感のある低い声。あの夜の…あまり怪物と言っては失礼だろう。彼はむしろナイトだった…彼が厳つく私を睨みながらドアのところに立っていた。
「…ぁっ…ぇと…っ、」
やはり喉が強ばって、声がうまく発せられなかった。なるほど陸尉という重大な士官につくだけあって、その迫力は生半可なものではない。ナイフのように鋭い警戒心が病室中を包み込む。昨日のレイプ魔集団を見据えていた、あの恐ろしい目付きが、今度は私に向けられているのだ。平静を保てるワケがなかった。
「……昨日の…?」
この刺すような重々しい空気を緩和したのは他ならぬ彼だった。彼は私を覚えていてくれたのだ。(今から思えば再会は昨日の今日の事だったし、何より私は彼の上着を携えていたのだ。忘れるほうが不自然というものだ)しかし、それが妙に嬉しくて、そして照れくさくて、私は気まずく俯くしかできなかった。
「なぜ、ここがわかったんだ」
「…ポッ…ポケットに…メモが……」
やっとのことで絞りだした声に自分自身戸惑ってしまう。私らしくなかった。普段の私なら初対面であっても、どんな偉い人であっても下品なため口でガンガンまくしたてているのに。その時の私ときたらしおらしく彼の上着を握る、ただの口下手で大人しい少女のようだった。彼の、尋常じゃない威圧感に気圧されていたのは確かだ。でも、別の感情があったのも事実。
当てはまる言葉があるとしたら“一目惚れ”。その表現さえも低俗なような気がする。獰猛な恐ろしい顔付きで何者も寄せ付けない威厳を放つ彼が、いつ目覚めるともわからない妻を変わらず愛しただ真っすぐ尽力しているだなんて。
どうしようもなく惹かれてしまったのだ。“美しい夫婦愛”なんて陳腐なものにではない。
“彼”に、惹かれたのだ。
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