穂乃香の長い土曜日・後編。
穂乃香の長い土曜日・後編。
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「は…、教科書…家に忘れてた…。…ちょっと、取りに帰る…」
“俺の許可なく部屋から…”という先生の脅しは覚えていたが、もうどうでもよかった。今は先生のご機嫌取りより、自分が壊れないかが心配だ。そして、罅が入った心を何とか原型に留めておくには、この部屋から出る必要がある。
「大丈夫ぅ?なんか顔赤いよ?」
友人の鋭い質問を曖昧に交わしながら、穂乃香はそそくさとリビングのドアに手をかけ廊下に飛び出ていった。その間に穂乃香は先生のほうを見なかったし、先生も穂乃香に一言も声をかけなかった。
―ドア一枚で仕切られているだけなのに、部屋と廊下ではまるで別世界だった。また遠くで笑い声がする。
穂乃香は目を閉じこの部屋の間取りを思い描きながら自分の居場所を探した。
本当に家に帰る気はない。どこか、一時非難できる些細な空間で良かった。
トイレはいつ誰が使うかわからないので止めておこう。他の部屋は「探険」だとか言って見にきそうだし……あとは。
あ…、
「お風呂場…」
―ぽつりと小さく呟き、穂乃香は見つけたての自分の居場所へと足を運んだ…。
先生のいじわる・了
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