穂乃香の長い土曜日・後編。
穂乃香の長い土曜日・後編。
あも


15ページ目

静かな宣告だった。発言した舌が喉を通して熱く痺れる。バイバイ、と言った瞬間沸き上がってきた涙の溜りを、先生に見つからないように拭った。

先生は何も言わなかった。何も言わないのが先生らしかったし、穂乃香もまた予想していたことだった。


けれど、いざこの不気味な静寂を目の当たりにしてしまうと、やはりこの重い空気は何とも居心地が悪い。自分はとんでもない事を言ってしまったのか、あるいは“何をいまさら”と先生は馬鹿にしているのかもしれない。先生の考えがわからないのは今に始まったことではない(現に今回もそれが原因だ)だけど、予想していたにせよ、“何の反応もない”というのは寂しくてーー切なかった。別れを告げればスッキリするはずだった心のモヤモヤは、一層暗がりを増した気がする。


穂乃香はスッと立ち上がった。奥に渦巻く熱は家に帰って処理しよう。もうここには居れないと思った。


この後先生が友人達に手を出そうが、そのせいで新城先生が解雇されようが穂乃香にはもう関係のないことだった。だいたいなぜ自分は躍起になって先生を守ろうとしていたのだろうーー先生は答えるどころか穂乃香を嗤って楽しんでいたのに。
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