幻惑
幻惑
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僕はリース会社勤務で関連会社のレンタカー部門に、配属されて今年で丸二年になる。
旅行代理店にパンフ片手に日参し、
個人向けツアーに使ってもらえるように働きかける営業活動と──
乗り捨てられた利用車の回収が僕の仕事の内容だ。
今日は──クリスマスイブだった。
利用車回収のためにしとつく雨のなか、レッカーに同僚の犬飼さんと乗り込む。
ナビの発信源からして、山村の駅で乗り捨てているようだ。
これは利用客の話と符合する。
しとつく雨にレッカー車窓──外の風景は洗われ消える。
目的地の駅につくと、黄色のコルベットが乗り捨てられていた。
駐車所は名ばかりで雑草が雨に茂る。
「竹内。俺、他の取りに行くから営業所に納車しといてくれない? 道わかるだろ? な」
と言い残し、犬飼はレッカーを発進させ立ち消えた。
僕はコルベットに乗り、エンジンをかける。
重いエンジン音が唸る。
アクセルを踏むと雨を振り切り草原から国道へ進む。
イブの夕方だが市街地を抜けて、山道に差し掛かると渋滞や喧騒などの街の明かりとは無縁となった。
前方に車もなく対向車もない。
夕方の7時前というのに、空に広がる闇や雨の勢いが増すばかり──。
僕は雨のせいか疲れていた。
泥のように寝たい。
イブに待つ女もなく、侘しい晩餐とシャワーが待ち遠しかった。
激しく打ち付ける雨の中、眩いライトが山道を照らし駆け走る。
平坦かと思えば徐行しカーブを曲がり傾斜を駆け上がる。
石を踏み車は軽く揺れ徐行カーブ、緩やかな下りと経て平坦な道に出た。
不思議なくらい対向車はなく、
同車線の前方に真紅のポルシェが重いエンジン音を響かせノロノロと走っていた。
僕は真紅のポルシェを抜こうと、アクセルを踏み加速する。
反対車線にでてポルシェの後ろについたと思うと前を遮り、減速する。
先は平坦な直線のようで脇道はない。
あっても獣道で侵入できない。
さらに抜こうとアクセルをふかしたが2度目も駄目。
3度目も駄目だった。
仕方なく車線を変えポルシェの後ろに接近すると妨害される。
真紅のポルシェは嘲笑うかのように前を譲らなかった。
サラブレッドのような駿馬を追う駄馬のような自分に苛立ちと怒りが募る。
車内は暖房以上に怒る僕の体は熱を帯びていた。
雨は滝のようにフロンとガラスを叩く。
ワイパーの単調な動きも僕を嘲笑するようで叩き折りたかった。
ポルシェは夜叉のように闇を真っ直ぐ疾走し僕を先導する。
どれくらい走ったのだろうか?空は漆黒に閉ざされ雨はいつしか雪に変わっていた。
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