幻惑
幻惑
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僕は刃を出したナイフで、湿気を帯びたパンストを削る。
しかし──なかなか切れない。
女は狂喜の状態で腰を振る。
グチョグチャいう体液か融けた雪を踏みしだく音かわからぬ音が、辺りに響く。
「あはっ……あぁぁ奥、奥奥ぅいい。あぁぁぁ……あっあっ」
女は乱雑に腰をふり動かす。
僕も女も──終焉は近いようだ。
かじかみ感覚や体温の喪失した手はパンストを断ち切りそうだった。
「あぁ……奥奥突いて、そうよぉ突いてぇ! あんあっイキそう、いくいくいぐ」
女の腰の振りは最高潮に達していた。
「あ゛っ、いぐっ……」
私は女の奥に精液を吐き出した。
体がこわ張りナイフを右手で掴んだ。
その瞬間パンストが切れた。
僕は起き上がり、ナイフの切っ先を突き出した。
ナイフの刃は10センチばかしだが、僕の切り札だった。
白刃が空を突き進む。
手応えがあった。
僕は目を見開いた。
女の左の肩甲骨の下にナイフは刺さった。
鮮血が流れた。
女は唖然とした表情をし、金切り声のような高笑いをした。
闇に女の笑い声が浸透する。
女は高らかに笑う──。
おかしいかのように目に涙を滲ませ笑い続けた。
女は息を整え冷たい視線を、僕に向けた。
「こんなもんじゃ殺せないわ……」
ナイフを抜き彼方に放り投げた。
傷口から鮮血が吹く。
肺に刺さったようだが、女が傷口を揉むと血はおろか傷口も消え失せた。
(やはり、ば、化け物?!)
僕は両手をクロスさせ十字を作った。
女はプッと吹き出し笑った。
「ゲーテもいってるわ。神は死んだんだって」
女は僕の両肩を押し倒した。僕は地面にまた頭を打った。
女は僕の首筋に顔を近付け首筋を舐めた。
次の瞬間首に激痛が走る。
「い……痛っ!」
女はピチャピチャ僕の首筋から流れる、血を舐める。
「私はエリザベートの末裔。あなたの血は私の血となり美貌と若さを彩りをなすのよ。永遠に」
──涙で視界が曇る。
鬱蒼とした木々の枝から月もなく真っ暗な闇が広がる。
次第に次第に視界が狭く……意識が遠く……遠く……
(さ寒い……寒……さむい……さ)
──はっ、寝汗を全身にかいている。
僕は病院のベットで目覚めた。
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