幻惑
幻惑
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(もう、いいや……)
諦めて減速すると、な、何か前で、眩しいっ、光った。
得体のしれない閃光に目がくらみ目を閉じた。
目を開く──。
「あっ!」
もう10メートル先にポルシェの尻、停まっていた。
反射的にブレーキを踏み、同時にサイドブレーキを引く。
ゆ、雪が車輪をとらえ(スタッドレスのはず)スピンし左側のボディを先頭に横滑りしてゆく。
左のドアがポルシェに滑走し続けた。
前は森──。反対斜線の向こうは暗く鬱蒼とした森。
僕は覚悟を決めた。
決死の勝負を挑んでやろう。
僕はサイドブレーキを倒し同時にアクセルを踏み切った。
ドカガ金属音が響き衝撃で体が跳ねた。
コルベットは左側面ドアがボコりと凹みながらも森へ疾走した。
反対車線、左からま眩しい光、クラクション、瞬時のこと、背後ではトレーラーが疾風を従え通過した。
(ふぅ……)
安堵し前をみた。木、木の幹だ。
サイドブレーキを引き、脚ブレーキを踏む。
(あっ……)
車は悲鳴を上げ木に吸い込まれた。
エアバックがひらき上半身が投げ出され、ハンマーで地面を打ったような衝撃。
(終わった……)
僕は昏倒した。
数秒が何時間もの感覚──目覚めた。
首が痛い。
ドアを押し開き、シートベルトをかなぐり捨てるように外し、転がり落ちた。
雪が降り注ぎ息が白くなる。
右膝を起こし立ち上がる。
ポルシェのドアがスライドし開く。
女だ──。
綺麗な脚を覗かせ全身が顕れた。
女はレザーコートを羽織り、レザーの手袋、豹柄のノースリーブを着て、
レザーブーツを軍靴ののように響かせ向かってくる。
シャロンストーンのように均整のとれた体型。
髪はセミロングか?目は冴え渡るように冷たい。
女の顔立ちは松嶋菜々子を彷彿とさせる。
僕は彼女によろめきながら近寄り──
「何で停車すんだ」
と叫び終わらぬうちに女の右拳がみえた。
雪に埋もれた路面が見える。
右の頬骨が熱をもち痛む──殴られた。
路面に仰向けに倒れた僕は背と頬の痛みを耐え身を起こそうと、グッ、女は脇腹をブーツの先で蹴りあげる。
僕は路面を森に転げ落ちる。
女は駆け追いつくと腹をブーツで数度踏み付ける。
ガハッ
(痛い。ヒールが刺さりそうだ)
耐え兼ねて胃の中のものを吐いた。
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