愛欲の序章
愛欲の序章
夜城零


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ボクは子機を充電器に戻しながら、ドキドキする胸を抑えて一生懸命考えようとした。
亜美とふたり……でも、それをいったら亜美は帰っちゃうかも。
でも、内緒にしておく訳にもいかないし……。
ばれたらきっと軽蔑される……でも、一緒にいたい。

なんだか呼吸も苦しくなってきた。
ちくしょう。ボクは大きく深呼吸した。

よし! ここは男らしく、亜美にちゃんと話そう。

それで亜美が帰るというなら仕方ない。
家まで送っていくくらいはさせてもらえるだろう。
ボクは意を決して、自分の部屋へ戻った。

「なんだかなぁ。あいつら、今日来れないってさ、まったく何考えてんだか」
ボクは平静を装い、いかにも困ったという雰囲気で文句をいいながら部屋に入っていった。

亜美は……。亜美は宿題をしていなかった。
いや、こっちを見てもいなかった。
背中をドアの方に向けて、何かを覗き込んでいる。
本棚から本を取り出して読んでいるのかな?
ボクは回り込むようにして、亜美に近付き何をしているのか確かめた。

「ああっ! 何してんのっ」
ボクは慌てて亜美の手から、亜美の読んでいるモノを取り上げて、背中に隠した。
ゆっくりと亜美がこっちを振り返って言った。

「マモル君、いつもこんなの見ているの?」
「いやっ! これは、あの、その兄貴ので兄貴が……あの、こーゆーの、えっと、なんていえばいいかな?
その、健康な男子が、あわわ、いやだから」

ボクはパニックになりながら弁解した。

それもそのはず。亜美が読んでいたのは、
兄貴の部屋からこっそり持ち出したSMグラビア雑誌だったのだ。
ボクは、これで亜美に嫌われてしまったと思った。
変態だと思われたに決まってる。
だけど、ボクは亜美の言葉にびっくりした。

「マモル君……あのね、私もそういうの興味あるの」
「えっ?」
パニックが収まってみると、亜美の瞳がなんだか潤んでいるようにも見える。

「興味があるって?」
亜美はこくりと小さく頷いた。
頬が真っ赤に染まっている。

(か、可愛い……)
ボクはごくりと喉を鳴らして唾を飲み込んだ。

「もしかして、やったこと……あ、その経験が?」
亜美は首を横に振って否定すると、ボクを見上げて消えそうな声で言った。

「ないわ。私……男の人ともキスしたこともないの」
ドキン。ボクは慌てて口を手で隠した。
心臓が飛び出すんじゃないかと思ったからだ。
幸いなことに心臓は飛び出してこなかったけど、言葉もでなくなってしまった。
でも、それで良かったんだ。亜美のこんな言葉が聞けるなんて。
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