不細工な二人
不細工な二人
折原浩平


22ページ目

思い出したように痛みが。
冷たい体は二度と微笑むことはなく。
溶け出した瞳は二度と私を/を見つめることはない。

憎しみに浸した肉体を狂喜と歓喜で奮わせて男は襲い掛かる。
あれほどに磨き上げ、鍛え上げた心身。
/は一瞥すらせず銀(ナイフ)よ煌く。
あらあら残念呆気なくその意味をなくした。

ラリった頭で彼を見る。
もう/は要らなかった筈なのに。
歩く、歩く。
彼の体温が移ったように、大気が凍土の風を運んでくる。
一歩…一歩!
凍える指と、ひび割れた唇でその名を呼ぶ。
「……!……!!」
丸焦げの体を抱き寄せる。
これが罰か!これが復讐かっ!!
見計らったように外壁が炎をあげる。
マリアの断罪か?
それともサタンの祝福か。
あの日のように世界は黒煙に包まれて。
ああ、それはまるで母の胎内のようだと。
あの日生まれた三人はこうして世界へ還るのだ。

涙は止まらない。
男は浄化の炎が連れて行った。
抱き締める腕に力を込める。
でこぼこの皮膚も今は愛おしい。
あの日死ななかったことを後悔した。
両親を殺したことを後悔した
でも…幸せだった。
二人だけの部屋も、帰り道も、遊園地も、一人でいる職場さえ彼がいれば輝いていた。
だからこの結末はきっと幸せで。

私が笑う。
/が笑う。
彼が笑う。
焔にまかれた私達。
不細工に二人は愛を誓う。
そっと口付ける二人を煉獄が隠した。
最後のその姿。
「とってもとっても滑稽でした」 と、誰かが言った。

そんな…笑える、物語。
         ー終

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