不細工な二人
不細工な二人
折原浩平


12ページ目

三十数分をかけて一周。
先程までと比べなんとも緩やかな乗り物だこと。

眼下の景色は変わらない人と街の波。
彼方に目を向ければ沈む陽光と陽炎(カゲロウ)。
繋がれた箱で佇む私には哀愁以外の何も感じられない。
では目を背ければよい。
元から視線を向けるべき場所は決まっている。
それをしないのは僅かばかりの罪悪感か、或いは戸惑いか。

ふと思い出す。
融解した赤い水が両手を灼く感触。
悶え苦しむ母をすり潰したいつかの記憶。
恐怖を興奮と歓喜に置き換えて握る手。
もしもあの時その手(好意)を振り払われていたら…と幾度となく夢想した。
それであれば確かに/は幸せだったのかもしれない。
無知という幸せ(血)の泉に、身を浸し続けていられたのかも知れない。

意を決して視線を合わせる。
すぐに反らされるかと思ったが想定外に観覧車の魔力とは強固なものだったらしい。
流されるままにそっと口づける。
温かく優しい恐怖が体を震わす。

そう、もし叶うのであれば。
この感触だけ置き去りにして、残りの人生を消し去ってはくれないだろうか?

日は沈む。
無意識に離れた二人の影たち。
打ち上げ花火は終わりへのカウントダウン。

ハハ、もう着いちゃった。

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