魔王様の暗々裏
魔王様の暗々裏
倉間九十九


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「よぉー、お前らようやくご到着かよ」

森を出てすぐに見えた小さな集落の、小さな宿舎に入るなり声をかけられた。フォウスが声のした方に視線をやると、一人の男がこちらに手を挙げていた。

「王子、知り合いですか?」

「いや、知らん」

フォウスの言葉に男がガクッと大袈裟に肩を落とした。

「ひでぇな、おい。もう忘れちまったのかよ」

そう言う男の名はジョージ。つい先日までいた村の宿の常連客だ。

記憶を手繰り寄せれば、なんとかおぼろげに覚えている気がした。

「なんであんたがここにいるんだ?」

自分達が村を発った時、確か彼はまだ村にいたはずた。特に寄り道をした覚えもないのに、何故後から出たはずの彼が先にここに着いているのか?

「いや、村の修復にあたって、随分予想以上に道具を消費してしまってな。慌てて町まで買い出しに行くことになったんだ。馬車だから途中でお前らを拾っていってやろうと思ったんだが、お前らまさか森を抜けて来たのか?」

ジョージの問いにフォウスが頷くと、顔をしかめる。

「よく無事にでてきたな。…て…あの嬢ちゃんは?」

フォウスが不機嫌そうに黙りこくったので、エーレルが代わりに簡単に説明した。

エーレルの話を聞いているうちに、ジョージの顔はみるみるうちに青く染まっていく。

「待てよ…。あの森…そいつは半端なくやばいぞ…」






「あっ!」

突然声をあげ、魔族達の後ろを指差した。

五人が五人とも揃って綺麗に後ろを向く。

「今だっ!」

ティナはその隙を着いて、わざわざ声に出して来た道を走って戻る。

「しまった!」

「あのガキ!なかなか巧妙な奴だな!」

「もったいない!追いかけるぞ!」

揃いも揃って頭はよろしくないようで、騙された五人は忌々しげに吐き捨てると、ティナの消えた道を続いて走った。





まさか、あんなアホみたいな手が通用するとは思わなかった。それも、ものの見事に。

ティナはそんな事を思いながら走っていた。

しかし、そういえば――と、足を止めた。

あいつらに掴まっていたあの男の子…十一か二くらいの子供だったが、やはりあれはそういう事なのだろうか?

しかし自分一人で戻ったところで無駄死には免れない。やはり一旦フォウス達と合流して……

「そんな時間があるわけない!」

ティナは唾を飲み込むと意を決し、またあの部屋へ向かって走り出した。
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