魔王様の暗々裏
魔王様の暗々裏
倉間九十九


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「本当にこの付近に魔族の気配はないんだろうな?」

「本当ですよ。少なくとも半径10キロ以内にはいません。私達の気配は、消したくて消せるもんでもないですし」

エーレルの言葉を疑う気はさらさらなかったが、それでもフォウスの不安は全く晴れなかった。何故なら、場合によっては魔族より人間の方がティナには都合が悪い。

ティナは一か月程前に滅ぼされたエンメイの里の生き残りである。エンメイで生をなしたものは、生まれながらにして魔を消滅させる力を持っているのだ。魔族に攻め滅ぼされた時も、里で戦える者三十人で魔族二百以上は返り討ちにしていた。もっとも千の軍勢できた魔族軍の前に、流石にそれは無駄なあがきの他にはならなかったのだが…。

随分探し回ったが、一向に見つかる気配がない。

「あいつ…。見つけたら絶対ぶん殴ってやる…」

フォウスが疲れ切った表情を隠そうともせずに呟いた。

「あ、王子。ゆーてるまにもう森から出てしまいそうですよ」

「だからその呼び方はやめろって。…確か森を出たらすぐ町があったな。町で何か手かがりがあるかもしれないな」

フォウスはあまり期待をしないような勤めながら、森の外へ足を向けた。






「なんだ…。人間のガキが何故こんなところに?」

全身が黒い皮膚に覆われた魔族の一人が、突然部屋に入って来たティナに視線を向ける。

「え…と。私実は迷子になっちゃってまして。でもおかまいなく!もう行きますんで」

ティナは額に汗を浮かべながら敬礼をしてみせ、くるりと方向転換した。

「待ちな」

一番聞きたくなかった単語を背中に撃たれ、ティナの背筋がビクンと伸びた。

ぎこちない動作で振り向くと、五人の人相の悪い顔がティナを値踏みするように視線を走らせていた。

「………なんでしょうか?」

あまり得意ではない愛想笑いを浮かべてみせるが、

「グェン…。こいつも食っていいんじゃねぇか?」

魔族の一人が、仲間の一人に呟くのを耳にして一瞬にして泣きそうな顔になる。

「だな。わざわざここまで来てくれたのに、なんのおもてなしをしないのもレディに失礼だしな」

そんな…おもてなしだなんて、お構いなく!てか魔族にレディなんて概念があるのか――いやいや、今はそんな事どうでもいいって。

真っ白になりかけの頭をできる限り回転させ、この状況の打開策を模索する。
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