魔王様の暗々裏
魔王様の暗々裏
2ページ目
最初に記述するべきだったのかもしれないが、ティナは方向音痴である。それも極度の。
一回でも分かれ道を進むと、もう元の場所には戻れないのだ。
だから一人で歩く時はせめて印をつけるなどをしなくてはならない。
そういった工夫がなければ、このように──
「……今、どっちから来たっけ?」
三叉路で棒立ちするはめになる。
まぁ、ここでアドバイスをしたところで、彼女に伝わるわけでもないのだが……
「んー…。うん、多分こっちだ」
ティナは自信満々で頷くと、一瞬の躊躇もなく来た道と違う方向へ歩き出した。
おとなしく落ちた穴の下で、叫びながら助けを待った方がいいと、歩き出してしばらくして気付いた。それで来た道を戻っている…つもりで歩いている。
しかし、当然いくら歩いても元の場所には戻れないのだった。
眼もすっかりなれ、所々の木漏れ日で十分辺りの様子が見て取れる。
通路は土岩でできてはいるものの、綺麗に整備されており、明らかに人工的な洞窟であることがわかった。といっても、天然の洞窟に人が手を加えただけであろうが。
落ちて歩き初めて、少なくとも一時間は立っていた。ここまで来るのに、はたしていくつ分かれ道に出くわしたか……
もはや完全に覚えていない。かなりの広大な地下洞窟である。いや、ここまで来たら迷宮といってもいいだろう規模だ。
突然、視界が開けた。
少し広い部屋に出たようだ。部屋の壁は正方形の石をレンガ状に積み重ねており、ここを洞窟だと忘れさす光景だった。真ん中には木の棒にロープでぐるぐる巻きにされた少年が一人と、その回りを醜悪な魔族が五人。
「あらら…」
どうやら、とんでもない所に出くわしてしまったようだ…
ティナは引きつった笑顔で、
「ちゃ?っス」
と、片手を挙げて挨拶した。
「暗くなりましたねぇ…」
「そりゃ、夜だからな…」
エーレルが盛大な欠伸をしながら呟くと、フォウスは機嫌悪そうに小さく言った。
「遅いですね」
「この時期じゃあ、暗くなる時間はこんなもんだろ…そんなに遅くもないさ」
エーレルがまた興味なさ気に呟くと、フォウスは木にもたれかかり腕を組んで言った。
僅かに沈黙が流れるが──
「や、そうじゃなくて」
「わかってる!」
ワンテンポ遅い力のないツッコミに、フォウスはついに声を荒げた。
声を荒げついでに傍らの剣をつかみ取り、重い腰を持ち上げた。
採点