大海走る白球
大海走る白球
倉間九十九


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オープン戦の初戦、西武ライオンズ。六回から中継ぎとして、瀬ノ川はマウンドに立った。

一応ブルペンで準備はしていたが、まさかいきなり呼ばれるとは思っていなかった。

マウンドから打席を見ると、よく知らない選手が右打席にいた。初戦ということで、今はどこのチームも二軍選手をメインで出している。

それでもある程度経験のある選手なのだろう。睨まれると全身が僅かに強張った。

瀬ノ川はキャッチャーの構えるミットだけを見ようと決めると、サインを見るために体を沈める。

サインはストレートのアウトロー。まぁ様子を見るという意味では無難だろう。

瀬ノ川は頷くと、バッターと対峙。

グラブを胸元で構え、右足を後ろにずらしながら、両腕をゆっくり上げ、頭の上から後ろに持っていく。

体を一塁方向に向け、右足をぐいとあげる。

左腕を後ろに─

右足で前に大きく踏み込むと─

腰の回転と─

左腕の振りと─

右腕の引き─

全てを同時に行い、最後に左足でおもいっきりマウンドプレートを蹴った。

ボールは珍しく狙い通り、「インロー」に向かって行く。

投げ終わり前を見た。

バットが空振る瞬間を見ようと─

カァン─

球は軽々と飛び上がり、大空に弧を描く。

瀬ノ川は呆然と白球を眼で追った。

オープン戦にもかかわらずそれなりに観客のいるライトスタンドへ、そのボールは吸い込まれていった…。

バッターは拳を突き上げ、悠然とダイアモンドを回っている。

二塁を蹴り、三塁─

三塁を蹴る時に、三塁コーチに軽くタッチ

ホーム直前でスピードを落とすと、がっしとホームベースを踏んだ。






結局、二イニングを投げて二安打一四球。三振を一つ奪った。

失点はあの本塁打のみだ。しかし、思い通りのところに投げれたのも、あの一球のみであった。

試合後のインタビューも十秒程で終わり、不機嫌顔で球場を出た。

「あんた、瀬ノ川純太?」

出口で唐突に声をかけられ振り向くと、一人の少女が立っていた。

「ん?…やっぱ体格も顔も特徴ないなぁ」

「なんだよ、お前」

ぶしつけにじろじろ見て来る少女に、瀬ノ川は低いトーンで尋ねた。流石に無視は気が引ける。

「あ、私まりん。あんた今日ホームラン打たれたピッチャーでしょ?」

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