彼方から……
彼方から……
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「俺を美宇の傍に行かせてくれ!!」
(条件はあなたにとって辛い事ですよ?また、彼女の許に行けたとしても必ず助けられるとは限らない。それでもそちらを選択するのですか?)
「あいつは……美宇は俺が必ず助けてみせる!!どうせ天国に行けるなんて思っちゃいない。早く条件を言ってくれ!そして美宇の許に行かせてくれ!!」
そこで声は沈黙した。しばらくの間を開けて再び言葉を紡ぐ。
(条件は二つ……。一つは時間。あなたが死んだ時から四十九日がタイムリミットです。今現在三日経ったので残りは四十六日間。そしてもう一つは仮りそめの肉体はあなた本人ではなく別人です。けれど、彼女に決してあなたの正体を明かさぬ事……もしばれてしまったら、タイムリミットを待たずしてあなたは地獄行きになります。)
声から突き付けられた条件は難しいものだった。
別人のまま正体を明かさずに自殺を思い留まらせる?そんなコト出来るのか?
しかし、俺に逡巡している暇はない。この条件を飲まない限り美宇の許へ行く事など出来ないのだから……
「わかった、その条件を飲もう。だけど教えてくれないか?何故正体を明かしてはいけないんだ?」
(それは仮りそめとはいえ、死した魂に再び肉体を与える事など本来は犯してはならない禁忌。まして下界の者に知られてしまうなどあってはならないのです。敢えてその禁忌を犯すならあなたは地獄行きになる。例えその理由がなんであったとしても……)
「なるほど、規律を破れば地獄行きか……だが何故あんたは手を貸すんだ?」
犯してはならない禁忌なら、そもそも手を貸す事さえあってはならない筈。
つまりこの選択肢すら有り得ないって事だ。
(克樹、あなたは言いました。もし再び目の前で同じ事が起きたなら、やはり同じ行動を取ると……。何度でも彼女を助ける、それが人間なんだと……。私は確かめたいのです。あなたの言葉が真実なのかどうか。さあ、あなたに残された時間は少ない。お行きなさい、よい結果が出る事を私も祈りましょう。未来は私にすらわからないのですから……)
その言葉を最後に俺の意識は再び遠退いていった。
美宇、待っていろ。お前を死なせやしない……
見せてやるよ俺の根性を
命を……かけて……
「道の真ん中でボサッと突っ立ってんじゃねぇよ!!バカヤロウ!!」
身体に衝撃を感じた後、罵声が聞こえた。気付くと俺は道の上に立っていて、声のする方へ顔を向けると肩をいからせたヤクザまがいの男が俺を睨み付けている。
「んだ?テメェ!文句でもあんのかよ!!」
「俺に言ってんのか?あんた俺が見えるんだな?」
「馬鹿かテメェ!!昼間っからラリってるんじゃねぇよ!!」
男は路上に唾を吐き捨てるともう一度俺を睨み付けて歩き去った。
そうか……肉体を持ってるんだな俺は……
待てよ?昼間?あの時は夜だった筈。じゃあ、あれから一日経ったのか?
こうしちゃいられないな。まず今の状況を把握しなければ……
俺は取り敢えず行動を開始しようとして、ふとある事に気付く。これからどうやって過ごせばいいんだ?
慌てて自分の持ち物を確認してみると、俺のポケットには財布と携帯が入っていた。財布の中には有り得ない程の現金に免許証……
免許証?
俺が持っていたのは知らない顔と名前の免許証だ。
「只野…克典(かつのり)。それが俺の仮の名前か……はっ!ご丁寧に俺が持ってた資格と生年月日は同じになってやがる。携帯の機種まで同じとはあいつも手回しがいいな……」
連絡手段に交通手段、そして当座の生活費……
XDayまで心配はいらないって意味か……。こいつは有効に使わせてもらうぜ。
俺は再びポケットに財布をねじ込むと行動を開始した。
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