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カオス・ストーリー23

?由依との奏で?
第8話

授業を終え、俺は帰路に就いた。
バスに乗ると今朝のことが思い出された…
照れ隠しに俺はずっと外を眺めていた。そのバスの中で俺と全く同じことをしている人物がいた。

上の空でバスを降りると…いた。由依ちゃんが。

由依「あ、翔太郎君…」

翔太郎「由依ちゃん…」

俺の心臓がバクバク早くなっていくのを感じた。
しかし、はっきりしていることが一つある。それが由依ちゃんに嫌われたくないということだった。

翔太郎「ねぇ、由依ちゃん? 朝のこと…怒ってる?」

由依「翔太郎君は、どうなん?」

翔太郎「え、いや、その…」

由依「わかってるで。 うちの方から倒れてしまったんやし… ごめんなさい」

翔太郎「俺は怒ってないし、由依ちゃんにこのことで気まずくなるのは嫌だ!!!」
気まずい空気が流れた。

翔太郎「少し…話さない?」

由依「…ええよ//」

俺と由依ちゃんはバス停近くにある公園のベンチに腰かけた。
俺は近くの自販機で二人分のジュースを買ってきた。
ジュースを由依ちゃんに渡すと俺はふっと息を吐いた。

由依「さっきのって…」

翔太郎「あ、ごめん。 せっかく知り合ったわけだし、あんなことあったけど…」

由依「そうやな… うちもな、あの時はびっくりしてしまったんやけどおんなし気持ちやと思う」

翔太郎「じゃあ、怒ってるとかじゃないってことでいいのかな?」

由依「うん」

翔太郎「そっかぁ、よかった…」

由依「ごめん、うち行かなあかんとこあるから…」

翔太郎「あ、ごめんね。 これからもよろしくね!」

由依「ほなね!」

由依ちゃんは俺の買ったジュースを持って公園を去って行った。
俺の姿が見えなくなってから、由依ちゃんはつぶやいた。

由依「翔太郎君が買ってくれた… うれしい…」

その頃俺は公園でひとり、ジュースを飲んでいた。

(はぁ…由依ちゃんって、やっぱりいい子だなぁ…)
一人になると由依ちゃんの唇の感触が思い出された。
思い出して少しにやけてしまいながら、ジュースを飲みほし、俺は家に帰った。


俺が家に帰ると家には誰も居なかった。
いつもなら俺が帰るころには母か珠理奈がいるはずである。それなのに二人ともいなかった。


(どうしたんだろう…?)
リビングのテーブルを見たら書置きがあった。そこにはこう書かれていた。

“今日は同窓会に行ってきます。ご飯は冷蔵庫にあるので食べてください。帰るのは明日の昼ごろです。 母より”

そして“今日はお泊りでーす♪ 珠理奈”

とあった。

翔太郎「なんだよ、みんな今日は帰らないのか…」

この時、俺の脳裏に浮かんだのは昨日のことであった…

ピッ

玲奈「もしもし?」

翔太郎「よぉ、今大丈夫?」
玲奈「うん… なあに?」

翔太郎「… …来てよ」

玲奈「何? 聞こえないよ?」

玲奈は俺にいたずらっぽく聞き返す。

翔太郎「今日、うちに誰も居なくてさ… よかったら遊びに来てよ」

玲奈「なるほどね♪ じゃあ『遊びに』行けばいいんだね?」

面食らった。玲奈ってこんなにドSだったっけ?

翔太郎「…泊まりに来て」

玲奈「うふふっ わかった♪ じゃあ… 一時間くらい待ってて?そしたら行くから」

翔太郎「わかった…」

それだけ言って俺は電話を切った。
この一時間、たった一時間がとてつもなく長く感じた俺だった。

30分くらいしただろうか、家のインターホンが鳴った。
(思ったよりも早いな…)
そう思ってドアを開けると、そこにいたのはチユウだった。

河西「せ?んぱい♪」

翔太郎「チユウか… どうしたんだよ?」

河西「あれ? なんか冷たいですね?。あ、今度トモ、ソロコンクールに出ることになったんですよぅ!」

翔太郎「お、おう。」

河西「それで…先輩いつでもレッスンしてくれるって言ってくれたので…」

チユウが帰るか、玲奈が来るのが早いか、俺はひやひやしながら話を聞いていた。

翔太郎「わかった、じゃあ予定が合えば教えに行くよ。」

河西「学校じゃ時間が決まっちゃうんで、トモの家まで来てらえませんか…?」

翔太郎「なんでもいいよ。悪い、今日これから出かけなきゃだから…」

河西「はっ ごめんなさい。 では先輩、おねがいしますね♪」

半ば無理やりチユウを追い返して、一息ついたとき…

玲奈「へぇ?、もしかしたら私もあんなごまかし方されるかもしれないのか…」

玲奈は玄関の前にいた。

翔太郎「いつからいたんだよ?」

玲奈「ん? さっきから♪ 河西ちゃん、ソロコンなんて大変だね?」
(つまりほとんど聞かれてたのか…)

翔太郎「チユウは関係ないじゃん。 まぁ、上がってよ」

玲奈「そうかもね(笑) おじゃましま?す!」
玲奈は俺の家に上がるとまずリビングへと足を運んだ。

玲奈「なんか女の子の家みたいだね(笑)」
確かに、うちは俺の部屋以外は基本的に母と珠理奈の縄張りみたいなものなのでかなり二人の趣味に合わせてある。そんなリビングに一つだけある俺の私物に玲奈は目を付けたようだ。

玲奈「これって、楽器…?」

翔太郎「そうだよ」
そこには昔の相棒が眠っていた。 あの日と何も変わることなく…

そして俺の方はというと返事をしつつも意識はすでに玲奈の体へと向いていた。

今日の玲奈は普段の玲奈のイメージとそう変わらない格好だった。

パステルピンクのトップスに白のフリルのスカート。正統派の女の子の服装だ。

(この格好だけ見たら誰も玲奈の性格は疑わないよなぁ…)

そんなことを思いながら玲奈を見ていた。

玲奈「翔太郎?」

玲奈が俺の方を向いた。
この時の表情は、まさに誘っているとしか言えない表情だった…。
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