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カオス・ストーリー23

メモリーズ?想い出の雫?
第6話

明音「あ、いつまでも立ってないでさ、悟ちゃんの隣が空いてるから座りなよ」
咲子「……はい」


ふわり。


咲子が悟史の隣に座ろうと腰を落としたとき、一筋の髪が悟史の頬に触れた。

どこか懐かしい想い。


この柔らかな感触、
そしてほのかな香り……。


……。


?「もうー!悟史!!
いい加減に起きなさいよ!!」
悟史「……んあ?」
?「『んあ?』じゃなぁい!
大体、何で私が膝枕なんかしなくちゃいけないのよ!」

悟史と優子のふたりは、よく晴れた休日に近くの公園に遊びに来ていた。

もともとは
「しっぽが2本あるネコ」の噂を確かめに来たはずなのだが、見つからずにいるうちにひなたぼっこになっていまっていたのだ。

悟史「んー。だって、優子の膝枕で寝ると、すげー気持ちいいんだもん」優子「そ、そんなこといったって、みんなジロジロこっちを見てるじゃない!」
悟史「別にいいじゃん。そんなのほっとけば」
優子「悟史は寝てるからいいかもしれないけど、私は恥ずかしいの!」

しかし、そうやって怒っている素振りを見せながらも、まだ悟史の頭を膝の上に乗せてくれている優子を、彼は素直に可愛いと感じた。
悟史「優子……」
上から包み込むように覗き込んでいる優子を、悟史は正面から見据えた。

優子「な、なによ!」

悟史「お前の髪な……」

優子「え?」

悟史「長いから、口に入った」


ごちん。


次の瞬間、悟史の頭は芝生の上に叩き落とされていた。


悟史「……あいたたた……お前なぁ、ちょっとは優しく……」

優子「あれ!」

悟史「なんだってんだよ。怒ったなら謝るよ……」

優子「そんなんじゃないって!
あそこ、ほら、あのネコ!
ほら、追いかけるよ、
悟史!」

悟史「……俺は怪奇ネコ以下か……」


(あれは確か……告白して1ヵ月ぐらいたったかな。
つきあいはじめても、あいつ、前とあんまり変わらなかったな……)


明音「悟ちゃん?
悟ちゃんってば!」

悟史「……んあ?」

明音「『んあ?』じゃなーい!!
咲子さんに失礼でしょ!なんでいきなり寝てるのよ」

悟史「いや、ほら、なんだかぽかぽかとあったかくてさ」

咲子「ふふふ……悟史さんって、なんだか面白い方なんですね」


どうやら、咲子は悟史の失礼な態度についてはあまり気にしていないようだ。
緊張もほぐれてきたのか、気がつけば会話の時折に笑顔を見せるようになっていた。


麻友「そうそう、それで、散らばっちゃった画材を咲子さんが拾い集めてくれたんです」

咲子「……それは当然だと思いますが」

一希「いやいや、松井さん。
それが自然にできない腐った人間が最近多くてねぇ」

咲子「最近の日本はそうなんですか……なにぶん海外での生活が長かったものですから。
あ、一希さん、私のことは咲子でいいですよ。
みなさんもそうしてください」

麻友「えー!
ずるいですよ咲子さん!私が名前で呼ばせてもらうのには、2日もかかったのに……」

明音「え?
どういうこと、麻友ちゃん?」


麻友の話によると、散らばった画材を集めてはくれたものの、出会った当初の咲子は他人を近づけまいとする強烈なオーラを放っていたらしい。


それを、麻友が3日がかりでここまで解きほぐしたというわけだ。


麻友「ま、そんなわけで、実はいろいろあったんですよ」

明音「ほへー。
麻友ちゃん、それなら一言いってくれればよかったの」

麻友「だって……知らない人にたくさん会うのは嫌だって、咲子さんが言うんだもん」

咲子「いえ……最初は確かにそう思ってました。でも、今は麻友さんがおっしゃったように、みなさん素敵な方たちばかりで安心しています」

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