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カオス・ストーリー2
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3
メモリーズ?想い出の雫?
第3話
明音の1駅区間に相当する長い説明を、一希の力を借りて要約すると……。
菊上学園では毎年、菊上祭……いわゆる文化祭が9月に行われる。
他校と比べると若干早いのは、一応進学校ということもあって、勉強に支障のでないようにとの配慮からのようだ。
さらに、あわよくば夏休みボケしている生徒をイベントで叩き起こそうという思惑もあるらしい
(ちなみに、体育祭もすぐあとに控えている)。
そして、問題は悟史のクラスの文化祭実行委員に、一希が立候補したということなのだ。
これは、一希の友人……当然、悟史たちにまでが巻き込まれたことにほかならない。
しかも、ほかの生徒たちはほとんどが部活動などの出し物にかり出されるため、帰宅部である一希のグループがメインで運営していくことになるのだ。
悟史「なんでそんな面倒なこと、引き受けんたんだよ」
一希「だって、なんだか楽しそうじゃん。女の子とも仲良くなれるチャンスだぜ」
悟史「……やっぱりそれか」
麻友「あ、私、高校の文化祭って初めてなんですっごく楽しみなんですよ」
明音「そっか。麻友ちゃんはまだ1年生だもんね……最近一緒にいるから、同じ学年みたいな気がしてたよ」
実際、高校の文化祭は生徒たちが金銭的に扱える額も増えるため、中学校のものと比較すると数段規模が大きくなる。
麻友の期待がふくらむのも無理はないというものだ。
悟史「……というより、明音の頭のなかがまだ1年生なんじゃないのか?」
明音「むむぅぅ!
そんなことないもん! 悟ちゃんのいぢわるぅ!!」
麻友「ふふふ」
明音「あ、麻友ちゃんまで笑ってるぅ!」
麻友「あ……そういえば、皆さん今日の放課後、空いてますか?」
明音「え?どうしたの、麻友ちゃん?
もしかして、また入院しちゃうとか!?」
体の弱い麻友は、常に入退院を繰り返している。
高校に入学してからの数ヵ月でも、すでに3回は入院していたはずだ。
そしてもちろん、その度に悟史たち3人はお見舞いに訪れていた。
麻友「いえ……そんなことじゃありませんよ。ちょっと、紹介したい人がいるんです」
明音「え、誰々?
有名人!?」
一希「やっぱり女の子だよね!
俺的にはサラサラロングのおしとやかなお姉さんタイプが好みなんだけど」
悟史「お前なぁ……んで、誰なの?」
麻友「えへへ……まだ秘密です。でも、一希さんは期待していいかもしれませんよ」
一希「えっ?
ホントに!?」
心底うれしそうな顔の一希の心は、すでに放課後に飛んでいる。
麻友「はい。それじゃ、放課後、みなさんの教室にうかがいますね」
一希「よおーし、それじゃ、放課後に備えて授業中は英気を養っておこうかな」
悟史「……って、一希、お前いつもと変わんねぇじゃねーか」
明音「悟ちゃんも人のこと言えないでしょ」
素早く、するどいツッコミをいれる明音は長年のつきあいから手慣れたものだ。
悟史「う……俺は別にだなぁ、授業なんか聞かなくてもわかるからいいんだよ」
明音「そんなこといってると、テスト前になってもノート貸さないからね?」
悟史「あ?
お前のノートなんて、見ても何書いてあるかわかんないだろーが」
明音「そんなことないもん!
悟ちゃんの……」
一希「ハイハイ、そこまでにしとこうぜ、おふたりさん。もう電車つくぞ」
気がつけば、電車はすでに菊上駅ホームにすべりこんでいる。
そして4人は、同じ学生服を着た生徒たちの波にのまれるように改札をくぐった。
学校自体は小高い丘の上に建てられているため、これからまだ数分歩かねばならない。
悟史(そういえば、小学校からいつも高い場所にあったな)
……そんなことを想いながら、悟史は通い慣れた長い坂をのぼっていく。
紫陽花の花が植え込まれた坂を上りきると、古びた校門が現れる。
創立100周年が目前らしいので、年季も入ろうというものだ。
悟史「んじゃ、放課後ってことで」
明音「麻友ちゃーん、授業頑張ってね?」
麻友「はい!
皆さんも頑張ってくださいね!」
ひとりだけ学年の違う麻友と別れ、3人は教室をめざした。
一希「そうそう、それで文化祭の出し物どうしようか?
今週末までに担任の先生に案を出すようにって言われてるんだけど」
悟史「だから、なんで俺に聞くんだよ。お前の好きなもんやればいいじゃないか」
一希「……いいのか?」悟史「え?」
一希「俺の好きにさせていいのかと聞いてるんだ。俺が好きなことをしたらなぁ……」
明音「一希くん、なんだかいやらしー目をしてるよ」
確かに、中空を見つめる一希の目は、別世界に飛んでしまっている。
彼が妄想の世界から帰ってくるまでには、放っておくとしばしの時間がかかりそうだ。
悟史「わかったよ……俺も考えるの手伝うから、今考えてたのはやめとけ」
一希「ちぇ……これはこれでいいと思うんだけどなぁ……」
明音「一希くん、よだれ拭いたほうがいいよ」
午前中の授業は、現代文と古典の眠くなる度満点のコンビネーション。
そのあとは物理というハードな教科続く。
3時限目のあとに1時間ある昼休みをはさめば体育があるので目も覚めそうなものだが、今の悟史には襲いかかる睡魔に抗うすべはなかった。
悟史(ん?
なんだかチクチクする。手?)
気がつくと、悟史の右手の甲にはプチプチとシャーペンの先を押しつけられた痕がいくつも残っていた。
そして、その痕を今も作り続けているのが……。
悟史「おい、優子……いい加減にしとけよ」
優子「なによぉ。ぜんぜん起きない悟史が悪いんでしょ」
悟史「だからって、こんなに痕つけやがって……」
優子「ふふーん。明音ちゃんに教えてもらったんだもんね?。こうすると起きるからって」
言われて前のほうの席を見ると、明音がこちらを見てニヤニヤしている。
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