真冬のこいびと

浅野花火

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 木々が色づいて、赤や黄色になり、やけに冷たい空気が秋のにおいを運んでくると、私はとても焦る。
 
 冬ごもりをしなければならない、という動物の本能なのか、また一つ年をとる事への焦りなのか私にはわからない。(私は冬生まれだから。)

 衣替えもすでに済み、新しいコートも買ったというのに、今年も私は得体の知れない何かに、焦っていた。

 冬が嫌いだという訳ではない。親には『真冬(まふゆ)』という馬鹿正直な名前を付けられたが、ちゃんとした由来があるらしいし、その事を恨めしく思った事はない。(真冬のような厳格で美しい子になりますように、らしい。)
 三年前からはスノーボードを始めたし、スケートにも行った。ウィンタースポーツは大好きだ。
 クリスマスが近くなると、木々に飾られたイルミネーションに積もる雪が好きだし、ずんずん積もっていく雪が空から降ってくるのを眺めるのも好きだ。最後には雪が降りてきているのではなく、自分が昇っている気分になるから。

 
 窓の大きな喫茶店で、ぼんやり外を眺めながらコーヒーを飲む。そしてその疑問は生まれるが、私が考え込むのはほんの二、三分で、すぐに日々の営みの中にまぎれて忘れられる。

 それっぽっちの疑問にすぎない。

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