生きた証

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この時間帯は幸せになれる。まるで天国だ。いや、実際に見たわけじゃないけど、そんな気がする。

俺って生まれる前は天国にでも居たのかなぁ。

とにかく今は昼休み。弁当を食べる時間なわけだ。無論、俺が学校に居る中で1番安らぐ時間にあたる。

だが、今日は違っていた。何かズレていた。はっきり言うと、ついてない。その一言に尽きる。

いつもなら、この机の上に弁当を広げて美味しく頂いている筈なのに、肝心の弁当が手元に無い。

理由は既にわかってる。俺が原因なんだ。

………忘れた。

「最悪だぁ?」

ホントについてない。テレビで確かめたわけじゃないけど、今日の運はきっと最下位だったんだろうなぁ。

「なんだ?俺の弁当は用意したのに、自分の分は無いのか。まさか、そんなに貧乏だったのか?」

「そんな貧乏じゃねーよ!いいよ、今日は食堂に行くから」

この高校には、大食堂って言う場所がある。広さはかなりあるが、大半は俺みたいに弁当で済ませてるらしく、あまり混雑はしない。

この食堂も他と同じように、お金を入れて食券を………。

「どうした?食堂に行くのだろ」

「この状況で何となくわからない?」

「いや、わからん」

「財布、忘れた」

あぁ、このままじゃ俺死ぬかもぉ。

絶望に流されかけた刹那、俺の目の前に女神が舞い降りた。

「橋田ク?ン。お弁当忘れたの?」

彼女の名前は高木春奈。俺達のクラスの委員長だったか、学級長だったか。

「あ、いや…まぁ、忘れた」

「困った奴だ」

お前にだけは言われたくねぇーよ。

「そうだよ!杉本クン、ヒドいよ?」

………?

「あっ!なら橋田クンに私のお弁当あげるっ!」

「いいのかぁ?」

「いいよ、はいっ!」

彼女から、かわいいウサギマークの弁当箱を受け取った俺は、さっそく中を覗いた。

おぉ!めちゃくちゃ美味そうじゃん。

「んじゃあ、頂きまぁーす」

「あっ!杉本クン、ちょっといい?」

「あぁ、構わん」

2人はそのまま教室を出て、何処かへ行ってしまった。

さっきの春奈って何か変だったよなぁ?

少しばかり悩んでいると、春奈が駆け足で教室に戻ってきた。

「橋田クン!」

「はい?」

「白猫は幸運を運ぶんだよ!」

そう言い残すと、彼女はまた駆け足で教室を出ていった。

「………へ?」

それって黒猫じゃなかったっけ?

こうして、昼休みは過ぎていった。

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