黒く、暗く、囀りて
折原浩平
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永久の讃美歌は風によって紡がれる。
屍は喜びの聖火を灯し、漆黒は闇のベールで新婦を優しく包み込む。
かつての人々は祝福を聖杯に注ぎ、黄金は光の旋律で新郎を強く激しく抱き寄せる。
老騎士の瞳から泪が零れる。
とある戯曲の様に清い恋ではないけれど。
胸に宿る激情は千の万の悠久の時代を越えて尚、どす黒く輝き続けた。
鉄屑から滴り落ちる血流に塗られたヴァージンロードは福音の刻を待ちわびる。
とある伝説の様に祝福された恋ではないけれど。
伴に過ごした刻を時間を場所を想いを、忘れたことなど一度もなかった。
祝福の鐘が鳴り響く。
ほんの一瞬口付けて、嬉し恥ずかし二人は進む。
道の先には愛すべき我が子がいる。
何も恐れる事はない。
一歩。一歩。
三者の指先が触れたその一瞬。
そう、幸せと共に世界は弾けた。
「これはわたしの、さいごのおねがいね」
ー黒く、暗く、囁いて。
新郎咳払い一つして。
「ぼくと、けっこんしてください」
こんな風に、囁いた。
ー終
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