がんばらない。でも、あきらめない
伊達屋酔狂
LaZoo掲示板
/
カオス・ストーリー2
/
3
リ
作品
へ飛ぶ
リ
▼
へ飛ぶ
1頁
2頁
3頁
4頁
5頁
6頁
7頁
8頁
9頁
10頁
11頁
12頁
13頁
2ページ目
オレらが病院に着いたあと、皮肉にも雨は小降りになっていた。
朝の光が神々しく雲間から指し込んで、街はいつもの朝を取り戻しつつあった。
サヤは病室でベッドに横たわっていた。透明のビニールで作られたテントの中で、様々な電信機器に囲まれて、呼吸器と点滴やらなにやら色んなチューブに繋がれて眠っていた。
顔は包帯でぐるぐる巻きにされていて、鼻から下だけが表面に出ている。ほっぺと唇がぼってりと異様に膨らんでいて、これがとてもサヤ本人だなんて信じられなかった。
傍らでお母さんが、泣き腫らした目で娘の安否を見つめる。サヤんちは母子家庭で兄弟もなく、お母さんだけがただひとりの家族なのだ。
お母さんはオレらに気づくと、自分の座っていた椅子をすすめてくれた。が、オレらは立ちすくんだまま動けなかった。
サヤがオレらから離れて、どっか遠くに行ってしまいそうな…そんな妙な感覚に襲われて涙が出そうになる。
「ばっかやろぅ…」
涙声で呟きながら、隣でマッツンが拳を自分の太ももに叩き付けていた。
お母さんがサヤの容体を話してくれた。
命には別状はないが、頭を強く打ち脊髄もやられてしまったと。ベッドから起き上がれたとしても、障害が残り二度とは立って歩けないだろう…と。
そう言うとお母さんは、小さく鳴咽して涙をこぼした。
オレとマッツンは午前中、病院の待合所の長椅子にへたり込み、ただボォーっと放心していた。
なにも言葉が出なかった。
朝の大雨が嘘のように、やわらかな太陽の光が大きな窓を通して、暖かい日溜まりを作っている。
春はもうすぐそこまできていた。
←前
次→
最新
採点
リ
▲
へ戻る
LaZoo掲示板
/
カオス・ストーリー2
/
3
戻る
/
トップ
総合テキスト投稿&無料HP作成
(C)
Chaos-File.jp